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連載

暴走型完璧主義ゲーマーの憂鬱

第10回

百地裕子(プロゲーマー)

 自己分析によって上手に自分を客観視するというのは、つまりこういうことだと思いました。自分がやったこと、やっていることを否定的に捉えるのではなく、ほどよく自分の頑張りを自分で認めてあげる。自分を甘やかしてはいけませんが、否定し過ぎてもいけません。これが上手にできれば、「全然努力できていない」とか、「もっと努力できるはずだ」みたいな勘違いも減らすことができます。

 これは「できないくせに完璧主義」ではない人にとっても有効だと思います。いつもより少し、前向きに生きられている気がして元気が出てきますよ!

上手に自分を振り返ってみる

 私は大学3〜4年の頃、自分のために使える時間が結構ありました。その当時に「ストリートファイター」(カプコン)をやり始めたので、ゲームの練習も長時間に及び、黙々と対戦に取り組んでいました。卒業して就職した自動車会社を辞め、フリーターをしながらゲームに勤しんでいた頃もたくさん時間がありました。その時もゲームセンターに頻繁に通い、がむしゃらに対戦練習するという日々を送ることができていました。

 しかし上京や起業をしてからは時間に余裕がなくなり、以前のようにがむしゃらに、ひたすらに、好きなことに時間を費やすことが難しくなりました。社会人の皆さんも一緒ですよね。会社へ行って帰ってきたらもう一日が終わってしまうとか、既婚者であれば家族とのだんらんで気づけばもう就寝時間……そんな生活リズムの中で、むやみやたらにたくさん対戦してゲームの練習をすることはなかなか難しいですよね。

 そんな環境で、学生の頃やフリーターの頃と同じやり方で練習をしていたら、上達までにはより長い期間を要してしまいます。ただし! 対戦するのはとても楽しいです。一人で黙々とキャラクターについての知識を深めたり、トレーニングモードで対戦についての調べごとをしたりするよりも「やっぱり対戦したい!」となりがち。

 私もそうです。帰宅して「さぁ『ストリートファイターV』をやるぞー。まずはちょっと対戦」とネット対戦を始めて、気が付けば数時間経っているなんてことはざらで、「明日も朝早くから仕事だし、もう寝ないと……」となります。

 そんな練習時間を過ごしてしまっていた時に、夫の〈ももち〉から活が入りました。

「対戦の数をこなすことももちろん大事だし、そうしなければならない時もある。だけど今は環境的に時間に余裕がないのだから、練習の質を上げる必要があるでしょ。もう少し知識を増やすことにも時間を割くべき。しかも負けが込むと、あなたは『練習しているのに勝てない』『成長が感じられない』とか言い出すでしょ?」

 さすが長年、横で私を見ているだけあり、私の思考がバレバレである。

「あなたの目標はどこなの? そこに向かうための小さな目標はどこなの? それがちゃんと見えていたら、努力の仕方を間違えない。目標がふわふわしていたらゴールがない道を走るようなものだから、そりゃーきついぞ。俺もそんなのは無理。しかも努力の仕方を間違うぞ。目標を段階的にしっかり設定して、それを達成したらどのように自分が変わるかまで想像する。それが想像できたら、今何をやるのが最善なのか見えてくるはず。ちなみに目標を達成しても自分が変わることができないような目標は、そもそもその目標が間違っている可能性があると疑え」

 この人は歩く自己啓発本か? と思いながらも〈ももち〉先生の指導をありがたく噛みしめました。

努力の仕方を間違えないということ

 強くなりたい、あんなふうになりたい。だからとにかく練習しよう――それだけでスタートを切っちゃ駄目なんですな。これやりたい、よっしゃやるぞー! と後先考えずに行動するタイプの私でしたが、それが通用するのは時間がたっぷりある若い時だけだったのかもしれません。

 間違った努力をしてしんどくなってしまわないように、まずは具体的な目標を段階的に立ててみる。富士山の山頂が目標達成地点だとすれば、1合目はこれを達成する、2合目はこれ――と徐々にレベルを上げて、こまめに達成できるような目標を設定して達成感を得られるようにする。そうすれば高すぎる目標に息苦しくならないし、努力が感じられない、なんてこともなくなります。

「急に生き方を変えられないよ!」という人は、生き方を変えるという大きな目標を立ててみるといいかも。実際、私はそれで少しずつ変われてきています。

 私自身、まだ4合目あたりを登っているような状況ですが、明らかに昔よりも生きていることに息苦しさを感じる回数が減りました。「成長したかな?」と思っているとガツンと失敗して、凹んで後退したりすることもありますが、少しずつ山を登れている実感はあります。必ずしもがむしゃらな努力が正解ではない。しんどくならない、上手な努力の仕方を自分なりに模索してみることを私はおすすめします!

 さて、ここまで生き方のコツをいくつか紹介しましたが、いかがでしたか?

 ちょっと考え方を変えるだけでも、自分の生き様の見え方がガラッと変わるかもしれません。実は小さな幸せは身の回りにたくさんあったりするけど、忙しく生きているとそれに気づかなくなる、とかも同じようなことだと思います。

 毎日しんどいなぁ、なんだか最近楽しくないなぁ、ちょっと息苦しいなぁ――そんなふうに感じる人に、少しでも参考にしてもらえたら嬉しいなと思います。

 それではまた次回。

著者情報

プロゲーマー

百地裕子

ももち ゆうこ

1986年、兵庫県生まれ。中京大学体育学部卒業。2008年より対戦格闘ゲームを始め、国内大会でトップゲーマーに勝利して知名度を獲得。愛称は〈チョコブランカ〉。11年にプロゲーミングチーム「Evil Geniuses」(本拠地・アメリカ)からスカウトされ、日本人初の女性プロゲーマーとなる。17年には北米のプロゲーミングチーム「Echo Fox」に移籍。夫は同チームに所属するプロゲーマーの〈ももち〉こと百地祐輔。世界初の現役プロゲーマー夫婦として、15年に株式会社忍ismを設立。「ゲームと人を繋げる」をモットーに、世界で活躍できる後進の選手育成、ゲームコミュニティーを盛り上げるためのイベントの企画・運営に携わる。

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