「完全な女」をめぐる闘い――シエラレオネの女性器切除
伊藤詩織(ジャーナリスト)
彼女自身も、FGMの後に出血多量で生死をさまよった。そうした経験をへて、いま彼女を支えているのは、「伝統は重んじて、危害は拒絶する」という考えだという。継承されてきた文化を否定する気持ちは一切ないが、と彼女は言う。
「でも、命の危険を伴う行為を許してはいけない」
こうした啓蒙活動が広がるなかで、近年では「イエローボンド」と呼ばれるFGMを抜きにした伝統的な通過儀礼を始めるコミュニティーも少しずつ現れてきた。取材に行ったシエラレオネ北部のマサンガという村では、FGMを受けさせないことを条件に女子生徒の教育を無料で提供するという学校を設立し、これまでFGMの儀式で行われてきた歌やダンスなどの祝典の部分や、女性として生きていくための指導の部分だけを残したセレモニーを行っている。

FGMを受けさせないことを条件に教育を無料で提供するという女学校の生徒たち
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女性として生まれてきたことを理由に体の一部を切除される。社会で認められるように、尊敬されるように、「完全な女」として生きられるように。「女ならこうあるべきだ」というステレオタイプや社会からの圧力は、FGMが伝統として行われていない日本にも存在する。それは男性に対しても存在するだろう。こうした風潮にどのように向き合っていくべきか、当たり前の伝統についてどう声を上げていくことができるのか、シエラレオネの女性たちから学ぶことは多い。
ドキュメンタリーについて
FGMという伝統、「完全な女とな何なのか」を奮闘しながら問うアジャイとファタマタ。その二人にそれぞれ焦点をあてたショートドキュメンタリーを、今回Yahoo Creators Programで制作しました。「Complete Woman」と題したシリーズの第1弾は「Story of Fatamata」、第2弾は「 Story of Ajaie」を配信します。こちらのリンクより視聴していただけます。