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ASMR

autonomous sensory meridian response

仲谷正史(触覚研究者)

 ある音響に対して自発的に官能的な感覚をもたらす反応を呼ぶ現象。autonomous sensory meridian response(自律感覚絶頂反応)の頭文字をとった略称で、「エー・エス・エム・アール」や「アスマー(アズマー)」「エイスマー(エイズマー)」などさまざまな読み方がなされている。
 2000年代末からYouTubeなどのマルチメディアコンテンツを集めた情報プラットフォームでASMRのコンテンツが配信され始め、2010年にアメリカのIT技術者ジェニファー・アレンが命名した。ASMRのコンテンツとしては、例えば、ささやき声や散髪、耳かき、天ぷらを揚げているところなど、「ゾクゾクする」という言葉で形容されるようなものなどがある。
 ASMRを引き起こす感覚情報を得ると、鳥肌が立つといった外から観察できる生理応答が確認できるだけではなく、「リラックスする」といった高次の感性状態を得られることがわかっている。ただ、ASMRは嗜好の違いによって個人差が大きい感覚であるため、ASMRに似た感覚情報であっても、ネガティブな効果をもたらすこともある。
 例えば、咀嚼(そしゃく)音などが人によって音嫌悪症をもたらすことがある。また、虫の羽音や車など物体が近づいてくる音に対して警戒して素早く応答するといった現象もある。音源に対する嗜好は、聴覚だけではなく、視覚や触覚など複数の要因が組み合わさって質感情報として知覚され、生まれているのではないかと考えられる。
 ASMRが生起するメカニズムについては、未解明な部分が多く、聴覚科学、音楽心理学、触覚科学、脳神経科学などの観点から研究が進められている。ASMRの生起メカニズムを解明することで、私たちが日常生活で感じている身体的な情報や情動に訴えかけてくるような感覚情報を引き起こす原因がわかる可能性がある。

著者情報

触覚研究者

仲谷正史

なかたに まさし

1979年生まれ。2008年、東京大学大学院情報理工学系研究科博士課程修了。博士(情報理工学)。民間企業にて皮膚の触質感科学の研究に携わる。2007年に立ち上げたテクタイルの活動を通じ、触感デザイン普及にも携わる。現在、慶應義塾大学環境情報学部准教授。共著書に『脳がゾクゾクする不思議――ASMRを科学する』(岩波書店)、『触楽入門』(朝日出版社)、『触感をつくる――《テクタイル》という考え方』などがある。

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