ローカス賞
イミダス編
SF・ファンタジーを専門とするアメリカの月刊情報誌「ローカス(Locus)」が主催する文学賞。1971年に創設された。前年に発表されたSF、ファンタジー、ホラー作品などを対象に授与する。受賞作は読者投票により選出される。主要なSF文学賞として、同じくアメリカのヒューゴー賞・ネビュラ賞と並んで、世界的な知名度を誇る。
運営母体のローカス誌は、1968年にニューヨークで、チャールズ・N・ブラウンらによって創刊された。同誌は英語圏のSFやファンタジー、ホラー文学の新刊リストまたは刊行予定の作品リスト、作品レビュー、著者インタビュー、著名な批評家による書評、編集者ら業界関係者の推薦図書などを網羅して掲載する。ジャンルや業界に精通した書き手による情報は、読者からの信頼を獲得して、SF・ファンタジー出版界で確固たる地位を築いてきた。
同誌は当初、毎年開催都市が異なる世界SF大会(通称:ワールドコン)招致を宣伝するための1ページのニュース誌として始まった。同大会では、SF文学賞として最も歴史のあるヒューゴー賞の授賞式が行われる。そのため「ローカス賞」の創設は、ヒューゴー賞の読者投票に向けた作品の推薦や提案を目的としていた。1970年以来、ページ数を増やし続け月刊誌へと伸展した同誌は、ファンジン部門(非商業誌)およびセミプロジン部門(半商業誌)で計30回のヒューゴー賞を受賞している。こうした活動を背景に、ローカス賞は独立した文学賞として発展し、英語圏のSF・ファンタジー出版界における権威ある文学賞の一つとして数えられるに至った。
ローカス賞は現在、SF小説部門、ファンタジー小説部門、ホラー小説部門、ヤングアダルト小説部門、デビュー小説部門、短編小説部門、ノンフィクション部門などと、2026年に新設された翻訳部門を含めた17部門で選考が行われる。また優れた編集者やアーティスト、雑誌、出版社にも賞が贈られる。
その翻訳部門で、村田沙耶香『消滅世界』(河出書房新社)の英訳版『Vanishing World』が最終候補作に選出された(受賞には至らなかった)。日本では長らくSF読者を中心に知られていた同賞だが、メディアで大きく取り上げられて話題となった。昨今は、国境を超えて国際的な人気を得る作品も少なくない。そんな潮流の中、ローカス賞に新設された翻訳部門は、英語圏以外で出版された優れた作品と翻訳者を独立して評価・可視化する動きの一つと言える。