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徴用工問題は本当に「完全かつ最終的に解決」されているのか(前編)

韓国大法院判決をめぐる日韓の相違点

吉澤文寿(新潟国際情報大学国際学部教授)

殷勇基(弁護士)

(構成・文/朴順梨)

「安倍晋三首相は2018年11月1日の衆議院予算委員会で、『政府としては、徴用工という表現ではなくて、旧朝鮮半島出身労働者の問題というふうに申し上げているわけでございますが、これは、当時の国家総動員法下の国民徴用令においては募集と官あっせんと徴用がございましたが、実際、今般の裁判の原告四名はいずれも募集に応じたものであることから、朝鮮半島の出身労働者問題、こう言わせていただいているところでございます』と述べました。安倍首相は1944年以降の『徴用』による徴用工以外は募集工だから、強制はなかった、と言いたいのではないかと思います。

 しかし、上記で説明したとおり、『強制』には二つの意味がありました。法的な強制は『徴用』だけですが、物理的な強制は『募集』『官斡旋』『徴用』のすべてにおいてずっとあったわけでした。ここでは、物理的な強制の有無こそが問題なのに、安倍首相の発言は、法律的な強制の有無のほうに話をすり替えているものです。なお、さらにいうと、今回の原告たちについては、当初は『募集』か『官斡旋』のかたちで働かされていたとしても途中で身分は『徴用』に切り替わっていたものと思われます。1943年に施行された日本の軍需会社法・軍需会社徴用規則という法令に、彼らのような『募集』『官斡旋』できた人たちをも国家総動員法の『徴用』とみなす、という規定があり、日本製鉄にはこの規定が適用されたからです。安倍首相の発言はこの点でも不正確です。

『募集』に応じた人の多くも純粋に応募してきたのかというと、やはり甘言や嘘によって集められ、暴力などによって労働現場で労働を強制されました。さらに官、つまり政府が斡旋(紹介)する『官斡旋』も法的な強制ではなかったけれど、やはり多くの人が物理的な強制によって、自分の意に反して労働をさせられました。呼び名を区別したところで、本人の意に反して強制した、という事実に変わりはありません」(殷勇基氏)

→後編へ続く

→「韓国との請求権・経済協力協定」(外務省ウェブサイトよりPDF)

著者情報

新潟国際情報大学国際学部教授

吉澤文寿

よしざわ ふみとし

1969年、群馬県生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程修了(社会学博士)。専攻は朝鮮現代史、日朝関係史。「日韓会談文書・全面公開を求める会」共同代表。著書に『日韓会談1965』(高文研、2015年)、『[新装版] 戦後日韓関係 国交正常化交渉をめぐって』(クレイン、2015年)などがある。

弁護士

殷勇基

いん ゆうき

東京弁護士会所属。

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