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がんを狙い撃つ「ドラッグ・デリバリー・システム」

実用化目前! がん治療の救世主

片岡一則(公益財団法人川崎市産業振興財団ナノ医療イノベーションセンターセンター長)

(構成・文/山田久美)

 2009年には、DDSの実用化を目指すプロジェクトが、内閣府の「最先端研究開発支援プログラム(FIRST)」に採択され、14年3月までの約5年間の期限の中で臨床開発を加速させることができました。
 その成果の一つが、ナノカプセルの中に造影剤を封入させたこと。DDSでナノカプセルに封入できるのは、何も抗がん剤だけではありません。脳腫瘍などの画像診断に使われる「MRI(核磁気共鳴画像法)」では、造影剤としてガドリニウムという物質を使っています。そこで、ナノカプセルにガドリニウムを封入しMRIで見てみたところ、微小ながんの描出に成功しました。
 加えて、ガドリニウムは外から中性子線を当てると、エネルギーを吸収してガンマ線を放出します。つまり、この物性を利用すれば、がん細胞の検出・診断と放射線治療を一度に行うことができるのです。
 具体的には、まず、ガドリニウムを封入したナノカプセルとMRIを使って、がん組織を描出します。次に、そのがん組織に対して、ピンポイントで中性子線を当てます。すると、ガドリニウムからガンマ線が放出され、それにより組織中のがん細胞のみが死滅するというしくみです。マウスによる動物実験の結果、高い効果が確認されており、こちらも、3~5年以内の実用化を目指していきます。
 また、DDSの核酸医学への応用も進めています。これは再生医療の一種で、抗がん剤の代わりに、遺伝子やメッセンジャーRNA(mRNA)など核酸をナノカプセルに封入しようというものです。マウスによる実験では、組織の再生を担うmRNAをナノカプセルに封入し、マウスの細胞に投与したところ、mRNAに基づく炎症を全く起こすことなくたんぱく質を生成。組織の再生に大きな効果があることが確認されました。
 さらに、現在はFIRSTプログラムに続き、文部科学省の「革新的イノベーション創出プログラム(COI STREAM)」に採択され、15年4月に神奈川県川崎市にオープンした川崎市産業振興財団のナノ医療イノベーションセンターで、「体内病院」の研究開発にも取り組んでいます。
 体内病院とは、ナノカプセルにさまざまな機能を付与したウイルスサイズの「ナノマシン」を体内に投入することで、ナノマシンが体内を巡回し、24時間365日、がんなどの病気を検出、診断、さらに治療まで行ってくれるというもの。20年頃をめどに、研究開発を進めています。
 このように、DDSは医療に革新をもたらすと考えられています。1日も早い実用化を目指し研究を進めているところです。

著者情報

公益財団法人川崎市産業振興財団ナノ医療イノベーションセンターセンター長

片岡一則

かたおか かずのり

1950年、東京都生まれ。74年、東京大学工学部合成化学科卒業。79年、同大学院工学系研究科合成化学専攻博士課程修了。同年、東京女子医科大学助手。89年、東京理科大学基礎工学部助教授。98年、東京大学大学院工学系研究科マテリアル工学専攻教授、2004年より同大学院医学系研究科教授を併任。2015年からは、公益財団法人川崎市産業振興財団ナノ医療イノベーションセンター長も務める。

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