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社会問題

生活保護基準の引き下げは、一億総貧困の引き金になる!

改悪の狙いは社会保障費全体を削ること

藤田孝典(NPO法人ほっとプラス代表理事)

(構成・文/寺田喜美子)

 このように、20年東京オリンピック景気の盛り上がりの影で実施されるのは、財政を維持しつつ、少子高齢化でかさむ社会保障費を抑制するための政策です。続く25年には、団塊の世代が75歳以上になり、35年には国民の3人に1人が65歳以上の高齢者になります。社会保障費は雪だるま式に増えていくとはいえ、どこまで削減を続けていくのでしょう。
 講演で全国を回ってみてわかったことですが、すでに高齢化率30~40%という地域も少なくありません。こうしたところでは年金と生活保護支給が経済の資本になっています。その支給額を減らすということは、地方経済にとっても大きな打撃です。
 17年にOECDが発表した調査結果では、日本の貧困率は12年の16.1%から15年には15.6%と少し下がりました。しかし、貧困ラインは122万円のまま変わらず、貧困率もOECD(経済協力開発機構)加盟国の平均11.4%よりも高いままです。貧困率は、その対策に予算をかけない限り、決して下がることはありません。具体的には、所得再分配政策、つまり税金を上げてその分を再分配しない限り、貧困率は下がらないのです。
 しかし、政府は大きな反発を恐れて税金を上げられない。財政危機で配分する予算がないので、いまある予算のどこかを削るしかありません。どこを削るか、常に足の引っ張り合いです。今回の生活保護基準引き下げは貧困率を下げるどころか逆行しています。これがさらなる悪循環を生み、格差拡大を加速する契機になることが心配です。もはや「一億総貧困」が大げさなあおりではないところまできているのです。
 とはいえ、以前に比べて、生活保護受給者に対するバッシングが減ってきているのは救いであり希望です。社会保障費がどんどん削られてきて、限界が近づいているからでしょう。政府は世論の方向性を見ています。今回も最初に厚生労働省が提示した13%引き下げが5%に下位修正されました。これをさらに4%や3%に下げていくことは不可能ではありません。
 そのためには、声を上げていきましょう。たとえば、Twitterで生活保護費や社会保障費の削減に反対する意見をリツイートするだけでもいいのです。近いところから「まずいよね」と声を上げる人が増えていくことで世界は変わるのです。

著者情報

NPO法人ほっとプラス代表理事

藤田孝典

ふじた たかのり

1982年茨城県生まれ。ルーテル学院大学大学院総合人間学研究科社会福祉学専攻博士前期課程修了(社会福祉政策)。聖学院大学客員准教授。反貧困ネットワーク埼玉代表。ブラック企業対策プロジェクト共同代表。厚生労働省社会保障審議会特別部会委員。首都圏で生活困窮者支援を行うソーシャルワーカー(社会福祉士)。著書に『下流老人 一億総老後崩壊社会』(2015年、朝日新聞出版)、『ひとりも殺させない』(2013年、堀之内出版)、共著に『知りたい!ソーシャルワーカーの仕事』(2015年、岩波書店)など。
(2016.1)

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