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もう一つの緊急事態!「誰も路頭に迷わせない」ソーシャルアクションの記録(2) ~コロナ禍の中で緊急性を増す生活困窮者支援の現場・その後

稲葉剛(一般社団法人つくろい東京ファンド代表理事)

新宿、渋谷、池袋、上野、北千住、立川、蒲田…都内各地のネットカフェにいる人、すでに出された人からのSOSが止まりません。所持金がなく徒歩でしか動けない人もいるので、つながりのある他の支援団体にお願いをしてアウトリーチ型支援を続けていますが、これは都がやるべきことではないでしょうか?

・現状をメディアに報道してもらうために、依頼の来た取材は全て受けることにする。取材の電話をひたすら受け続ける。
都の対応を改善させるため、メール相談の対応は佐々木に任せ、オンラインでのロビー活動に専念することにする。会ったことのある都議会議員、国会議員に電話やメールで相談。自民党の国会議員にもオンライン会議で現状を訴える。与党の議員も、野党の議員も、問題点を認識してくれて、都や国への働きかけをしてくれる。

・夕方、東京都が宿泊枠を2000人分まで増やし、「都内6ヶ月未満」の人も受け入れることになった、という情報が入る。大きな成果だ。


4月11日(土)

・東京都はこの土日も「チャレンジネット」の窓口を開けることを決めたものの、相変わらず広報をしない。SNSでは、行政の代わりに私たち支援関係者が「チャレンジネットに相談に行ってください」と広報をしている。都から広報費をもらいたいくらいだ。
日本共産党や公明党、無所属の都議会議員、区議会議員も広報に力を入れている。足立区議会議員のおぐら修平さん(立憲民主党)はチャレンジネットや福祉事務所への同行もしてくれている。
この緊急時に「路頭に迷う人を出さない」というのは政治的立場を越えた共通の目標になりつつある。

・夕方、池袋の公園で行われているNPO法人TENOHASIによる路上生活者支援の炊き出し・相談会に顔を出す。自民党の国会議員と共産党の都議会議員も、それぞれ現場視察とボランティア参加を兼ねて現場に来ている。双方に、この間の協力のお礼を伝え、現状を説明する。


4月13日(月)

・都は土日に限り、「都内6ヶ月未満」の人も受け入れたものの、あくまでそれは緊急措置で、都が直接支援するのは「6ヶ月以上」いた人に限るというルールは死守する構えだ。
6ヶ月以上の人は、「チャレンジネット」で受け付けをして、5月6日までビジネスホテルに泊まれるが、6ヶ月未満の人への支援は、都ではなく、その人が以前泊まっていたネットカフェのある地域の区や市が責任を持つことにしたという。当事者にとっては、非常にわかりにくい仕組みだ。
そのため、11日(土)、12日(日)にチャレンジネットで受け付けをした6ヶ月未満の人は、今日、いったんホテルから出され、各自、自分のいた地域の区役所・市役所に相談に行ってください、という対応になっている。

・相談にのっていた男性から、区役所に行ったが、対応をしてくれなかった、という連絡が入る。同様の話が各地から入り、対応に追われる。

・この日は路上生活者支援の夜回りを予定していたが、感染リスクを踏まえ、ボランティアの参加は控えてもらった。
夜、ホームレス支援に関わる医師の車に乗せてもらい、路上生活をしている人にパンとマスクを2人で渡していく。顔見知りの多い中野周辺と有楽町周辺を回るが、公共施設や公園の一部区画が閉鎖されているため、どこに行ったかわからない人が何人もいる。
4月とは思えない寒さの中、みんなどこにいるのだろうか


4月14日(火)

・自民党内に「ハウジングファースト勉強会」が設立され、初回の会合が開かれる。私はオンラインで講演を行い、従来の行政施策の問題点とコロナ危機における住宅支援の重要性について説明をする。
「ハウジングファースト」とは、生活困窮者への支援において、安定した住まいの確保を最優先にする支援アプローチである。コロナ危機において、ハウジングファースト型の支援が有効だという認識が与野党を問わず広がっているのは、喜ばしいことだと思う。


4月15日(水)

・13日(月)に区役所で生活保護を申請した男性からSOSのメールが入る。
役所の担当者から何の説明もないまま連れていかれたところが、相部屋の民間施設だった。他の入所者は誰もマスクをしておらず、せき込んでいる人もいて、怖くて仕方がないと言う。
「ここに案内されたことで先行きが真っ暗で。贅沢は言いませんが、あまりにも不衛生すぎる室内。食事も一口も手を付けてません。昨日も一睡もできませんでした」
「1日、過ごしてみましたが、今すぐにでもここから出たい気持ちでいっぱいです」
すぐにご本人と連絡をとり、小林ともう1人のスタッフが役所に交渉に行く。すぐにビジネスホテルに移れることになる。

・同様の事例が相次いでいるという報告を受ける。都内6ヶ月未満で、13日に生活保護を申請した人が次々と相部屋の施設に入れられている模様。
ネットカフェに休業要請が出されたのは、感染症の拡大を防ぐことが目的だったはずだが、そこから出された人がネットカフェよりも危険な場所に誘導されているのでは本末転倒である。

・背景には、東京都が4月10日に各区・市に出した事務連絡がある。そこでは、住まいのない人が新たに生活保護を申請した場合は、「第一義的に」民間の施設等を活用することと書いてある。都がビジネスホテルを多数確保したにもかかわらず、それはなるべく使わせまいという意図があるようだ。

・4月3日に申し入れをした際に、都の生活福祉部保護課長の名刺をもらっていたので、電話をして直談判をすることに。
保護課長は、民間施設を優先するのは「既存の制度の運用であり、変えられない」の一点張り。あまりに官僚的な受け答えに、「あなた、自分だったら、相部屋の施設に入れますか!」と問い詰めると、「当初の事務連絡は変えられないが、(各区・市あてに出す具体的な緊急一時宿泊場所利用についての)Q&Aを出し直して、柔軟に対応できるようにする」と答える。

Twitterに怒りの投稿。

怒りに体が震えている。ネットカフェを出されて野宿になり、やっとビジネスホテルに入れて助かったと思ったら、ネットカフェより環境の悪い貧困ビジネス施設に入れられる。その絶望感を理解できない人は、福祉の仕事を辞めた方が良い。

・夕方、都から新たな事務連絡(Q&Aの変更)が出る。本人とのやり取りにおいて民間施設が困難と判断した場合は、ビジネスホテルを使ってもよい。民間施設を使う場合も、施設の感染症対策を確認した上で、可能な限り個室で対応すべしという内容。
中途半端な改善ではあるが、相部屋に入れられた人が「こんなところは無理」と主張すれば、個室に移れる余地は広がった。

・北畠さんが起案し、ホームレス支援団体の連名で東京都と厚労省に新たな要望書を提出。個室対応の徹底を求める。


4 月16日、省庁交渉前の議員への要請 写真提供/つくろい東京ファンド

4月16日(木)

・反貧困ネットワークが呼びかけ、20以上の団体が集まって結成された「新型コロナ災害緊急アクション」が、各省庁との初めての交渉に臨む。
交渉のテーマは、福祉、労働、教育など多岐にわたる。私は住宅分野を担当している。

私が強調したのは、住居確保給付金制度を再改正する必要があるということ。4月20日から、離職者だけでなく、休職等により収入が減少した人にも門戸を開いたことは良いことだが、もう一つ、ネックになっているが、「正社員として雇用されることをめざして、求職活動に励む」という要件だ。
今回の危機では、フリーランスの音楽家やアーティストが経済的な打撃を受けている。その人たちに対して、正規雇用をめざして求職活動をしろと言うのは、今の仕事をやめろと言っているようなものであり、あまりに酷だ。せっかく対象者を拡大したのだから、求職活動の要件も緩和し、もっと使いやすくすべきである。
Twitterに書かれていた声楽家の意見も紹介しながら、厚労省の担当者に改善を求める。担当者は「持ち帰って検討する」とのこと。

・れいわ新選組の山本太郎さんより連絡。生活保護を申請した人が相部屋の施設に入れられるのを止めるため、厚労省の社会・援護局長に申し入れをするという。この件では、与党の議員も動いてくれている。


4月17日(金)

・4月9日(木)にメールで相談が来て、「つくろい」の個室シェルターに入所していた若者から、無事にビジネスホテルに移れたという連絡が来る。新宿アルタ前で待ち合わせをして、シェルターの鍵を返却してもらう。求人が減っていて、仕事探しも大変だが、がんばりますとのこと。

・厚労省が各自治体に新たな事務連絡を発出。
「新たに居住が不安定な方の居所の提供、紹介等が必要となった場合には、やむを得ない場合を除き個室の利用を促すこと、また、当該者の健康状態等に応じて衛生管理体制が整った居所を案内する等の配慮をお願いしたい」‬との内容が盛り込まれた。
当たり前のことだが、ようやく相部屋に入れるのはダメという方針が示されたことになる。

‪・厚労省が「新規の人については原則、個室へ」という方針を出したのに合わせて、東京都も新たな事務連絡を出し、「原則、個室対応」へと方針転換した。‬‬‬‬‬‬‬‬‬今後、新たに生活保護を申請した人が相部屋の施設に入れられる、という事態は避けることができそうだ。

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著者情報

一般社団法人つくろい東京ファンド代表理事

稲葉剛

いなば つよし

 1969年、広島県生まれ。立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科客員教授、認定NPO法人ビッグイシュー基金共同代表、住まいの貧困に取り組むネットワーク世話人、生活保護問題対策全国会議幹事、いのちのとりで裁判全国アクション共同代表。東京大学教養学部卒業。94年から東京都の新宿を中心に野宿者の支援運動に参加。2001年、「自立生活サポートセンター・もやい」を設立。貧困問題の相談や支援に取り組む。14年、一般社団法人「つくろい東京ファンド」を設立し、空き家・空き室活用による低所得者支援を事業化。著書に『閉ざされた扉をこじ開ける』(朝日新書 2020年)、『貧困の現場から社会を変える』(堀之内出版 2016年)、『鵺の鳴く夜を正しく恐れるために―野宿の人びととともに歩んだ20年』(エディマン/新宿書房 2014年)、『生活保護から考える』(岩波新書  2013年)、 『ハウジングプア』(山吹書店  2009年)など。共著書も多数。

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