もう一つの緊急事態!「誰も路頭に迷わせない」ソーシャルアクションの記録(2) ~コロナ禍の中で緊急性を増す生活困窮者支援の現場・その後
稲葉剛(一般社団法人つくろい東京ファンド代表理事)
相部屋問題は、さまざまな立場の人が声をあげ、メディアが報道し、政治家も動いてくれたおかげで、短期間で改善を勝ち取ることができた。
だが、残された課題もある。
民間施設(無料定額宿泊所)がビジネスホテルに優先されるという点は変わっていない。東京都は多数のビジネスホテルの居室を確保したにもかかわらず、なるべくそれを使わせたくない、という姿勢は変わっていない。
もともと民間施設に入っていた生活保護利用者の置かれている環境も忘れてはならない。いま施設にいる人も、希望者は早期に居宅へと移行するかか、ビジネスホテルへの転居を進めるべきである。ビジネスホテルに入っている人についても、宿泊期間が終わった後、東京都や国に住宅支援を実施させる必要がある。
感染症の拡大を防止するという観点からも、ハウジングファースト型の支援の有効性が明らかになりつつある中、新たな生活困窮者支援のモデルを確立しようという動きと、従前の「施設ファースト」型の支援を継続させようという動きがせめぎ合っているように私には見える。
「もう一つの緊急事態」を乗り越えるためには、官民ともに「住まいを失わないための支援」と「住まいを失った人への緊急支援」の両方を強化することが必要不可欠である。
感染症リスクを踏まえると、かつてのような大規模な相談会や集会、デモといったツールは使えないが、現場での相談支援を進めながら、オンラインによるロビー活動、政策提言、SNSやメディアを通した社会への発信を展開していくことは可能だ。
「誰も路頭に迷わせない」ためのソーシャルアクションは、今後も続いていく。
著者情報
一般社団法人つくろい東京ファンド代表理事
稲葉剛
いなば つよし
1969年、広島県生まれ。立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科客員教授、認定NPO法人ビッグイシュー基金共同代表、住まいの貧困に取り組むネットワーク世話人、生活保護問題対策全国会議幹事、いのちのとりで裁判全国アクション共同代表。東京大学教養学部卒業。94年から東京都の新宿を中心に野宿者の支援運動に参加。2001年、「自立生活サポートセンター・もやい」を設立。貧困問題の相談や支援に取り組む。14年、一般社団法人「つくろい東京ファンド」を設立し、空き家・空き室活用による低所得者支援を事業化。著書に『閉ざされた扉をこじ開ける』(朝日新書 2020年)、『貧困の現場から社会を変える』(堀之内出版 2016年)、『鵺の鳴く夜を正しく恐れるために―野宿の人びととともに歩んだ20年』(エディマン/新宿書房 2014年)、『生活保護から考える』(岩波新書 2013年)、 『ハウジングプア』(山吹書店 2009年)など。共著書も多数。