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社会問題

急増する困窮外国人のいのちを守れ!「本国が保護すべき」という論理を超えて

大澤優真(ソーシャルワーカー)

 しかし、1990年10月、厚生省(当時)は、永住者や定住者、配偶者ビザ以外の外国人や非正規滞在者などを生活保護から排除するように、各自治体に対して「口頭指示」を出した。現在まで繋がる外国人保護問題が生じたのである。また、こうした対応は生活保護法を改正することによって行われたのではなく、国会において議論されることもなく、厚生省の判断だけで行われていた。厚生省は「口頭指示」を発出した理由について、「1950年の生活保護法制定時から準用措置の対象者は制限されており、『口頭指示』はそれを確認するために発出したものであって制限するために出したものではない」という趣旨の説明をした。しかし、先に述べたように、各自治体はそれまで実際の運用において、留学生などにも保護を行っていた。この「口頭指示」は、こうした自治体の対応に変更を迫り、準用措置の対象者を制限するものとして、機能していた。

 

「本国が保護すべき」という国の論理の限界

 そもそも、外国人に対して生活保護法の適用を認めない理由について厚生労働省は以下のように説明している。「外国人に対する保護については、こうした生存権保障の責任は、第一義的にはその方が属する国が負うべき」「外国人に対しての保護については、人道上の観点から、行政措置として行っている」(2018年4月18日衆議院厚生労働委員会)。厚生労働省は、外国人が困窮した際には、一定範囲の外国人については人道上の観点から準用措置を行うが、原則的には、外国人の本国が保護すべきであり、日本政府が保護する必要はないと示しているのだ。

 私たちは国民国家というシステムの中で各々の国に属して生活している。国は自国民を保護する責任があり、先の厚生労働省の説明はもっともらしく聞こえる。仮にそう考えるのであれば、日本国外で生活する日本国民が困窮した場合、日本政府はこれらの人たちを保護しなければならない。しかし、実際には、厚生労働省は日本国外で生活する日本国民に対して生活保護の適用を認めておらず(第169回国会〈常会〉答弁書第70号、社援保発第0401006号 厚生労働省社会・援護局保護課長通知)、これらの人たちを保護していない。これに対して「日本国外で生活する日本国民にも生活保護を適用すべきだ」という見解も考えられるが、それは現実的には技術上・実務上の観点から困難だろう。厚生労働省が主張する本国が保護すれば良いといった「本国主義」には限界があるのだ。

 こうした背景から、本国からも居住国からも保護を受けられない人が生み出される。それが今示した日本国外に暮らす日本国民であり、また、日本に暮らす外国人なのである。私たちは「その人の本国が保護すべき」と言うだけではなく、こうした国民国家の狭間に置かれた人たちのことも考えなければならない。

 では、この問題に対してどのように対応すればよいのか。さしあたりは、本国の保護を得られない/本国に帰国することができない人には生活保護法を適用する必要がある、と私は考える。ここで言う「本国の保護を得られない/本国に帰国することができない人」というのは、日本に生活の基盤がある人、日本で生まれ育った人、難民や難民申請者、無国籍者、ケガや病気によって急迫状態にある人、現在のコロナ禍によって帰国できない状況に置かれている人などである。在留資格の有無や種類によって保護を行うか否かを判断すべきではない。

 

増加する困窮外国人をこのまま放置していいのか

 困窮した外国人の保護は今すぐに行わなければならない。2020年6月末現在、288万5904人の在留外国人が日本に暮らしている(法務省「在留外国人統計」)。このうち、準用措置を受けられない外国人は138万5937人、在留外国人の約半数にあたる。この統計には約3000人の仮放免者、約8万人の非正規滞在者は含まれておらず、準用措置を受けられない外国人はさらに増える。また、今後、日本に暮らす外国人が増加することが予想され、それに伴い準用措置を受けられない外国人も増加することが見込まれる。

 こうした状況を放置していれば困窮化した外国人が日本社会にあふれる事態になってしまうし、今まさにそうした状況になりつつある。それは困窮外国人を周縁化・地下化させ、日本社会に交わらない別世界を生み出してしまうのではないだろうか。周知のとおり、日本社会は外国人がいなければもはや成り立たず、また、「日本に移民はいない」という主張は建前と化している。そうであれば、いかにして外国人とともに日本社会を創り上げていくかという視点が必要になってくるだろう。そのとき、生活保護は、外国人の命や生活を守ることに加えて、日本社会の分断を防ぎ、日本社会を創り上げていく土台としての役割を果たせるのではないだろうか。困窮外国人の保護は外国人だけの問題なのではなく、日本社会全体の問題なのである。今私たちは日本社会の将来を左右する分岐点にいるのかもしれない。

著者情報

ソーシャルワーカー

大澤優真

おおさわ ゆうま

1992年、千葉県生まれ。法政大学大学院人間社会研究科博士後期課程修了。博士(人間福祉)。大学非常勤講師。2014年より生活困窮者支援団体「つくろい東京ファンド」生活支援スタッフとして、夜回り、ホームレス状態にある人のシェルター入居支援、シェルターからアパートへ移った人への地域生活支援を行う。また、2018年より困窮外国人支援団体「北関東医療相談会」事務局スタッフとして、仮放免者など困窮する外国人の支援を行う。Twitterアカウント:https://twitter.com/yumananahori

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