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ナメクジを追跡せよ!

身近にいるのによく知らない、この小さな生きものたちの世界

宇高寛子(京都大学大学院理学研究科 生物科学専攻助教)

 マダラコウラナメクジの侵入により、新たな「ナメクジの置き換わり」が起こる可能性があります。実際に茨城県で調査してみると、ノハラナメクジは見かけますが、全国に定着しているはずのチャコウラナメクジはあまり見かけません。直接な関係は断定できませんが、マダラコウラナメクジは他種への攻撃性が強いこともあって、チャコウラナメクジや在来種のナメクジにとって代わる日がくるかもしれません。また、マダラコウラナメクジは体が大きいので、食べる量も多く、チャコウラナメクジでは大きな問題にならなかった食害も増えることが懸念されます。
 一方で、「ナメクジ捜査網」などによってマダラコウラナメクジが多くの人に注目されるようになると、駆除されやすい状況ができ、これ以上の分布拡大が阻止される可能性ももちろんあります。
 マダラコウラナメクジの分布や繁殖時期、繁殖のしくみなどを長期的に追跡することは、侵入した場所の気候の違いなど、新しい環境に対して外来種がどう適応していくのか、そして種と種の関係性や、その周辺の生態系がどのように変化していくのか、という大きなテーマに迫る格好のケースになりえるのです。

身近な小さな生きものに興味をもって

 多くの人は、身近にいるナメクジたちのことをよく知る機会がそもそもありません。ナメクジに限らず、怖い、嫌いだと思っていたものでも、よく見ると案外かわいい、そんなに気持ち悪いものではなかったということも、多分にあると思います。私たちの研究や「ナメクジ捜査網」のようなプロジェクトが、身近な小さな生きものたちに興味をもってもらい、その興味を発展させていくきっかけになれば幸いです。

著者情報

京都大学大学院理学研究科 生物科学専攻助教

宇高寛子

うだか ひろこ

2003年、大阪市立大学理学部生物学科卒業。08年、同大学院理学研究科後期博士課程修了。同大学特任講師・特任助教などを経て14年から現職。
著書に『ナメクジ おもしろ生態とかしこい防ぎ方』(共著 農山漁村文化協会 2010年)、『貝のストーリー 「貝的生活」をめぐる7つの謎解き』(共著 東海大学出版部 2016年)。その他、「明大昆虫セミナー」「萌える生物学」などでの講演活動も行う。

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