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カタログの読み方(10) ホームシアター入門編

ハイビジョン画質の次は、音質にこだわろう!

鴻池賢三(DAC JAPAN代表/THX認定ホームシアターデザイナー)

 映画館でおなじみの、観る人を取り囲むように立体的な音声を提供する「サラウンド」。これを家庭で堪能するシステムが、「ホームシアター」です。マニア的な趣味と思われがちですが、テレビの高精細化・大型化とともに、設置や接続、操作が簡単で手軽な機器が登場し、リビングで誰もが気軽に映画館並みの臨場感と迫力を楽しめる時代になりました。

ホームシアターって、何がイイの?

 映画館で窮屈な思いをしたことはないでしょうか。ホームシアターのシステムを用意すれば、誰にも気兼ねせず、いつでも、ベストポジションに陣取って、臨場感ある音声で、観たい映画を楽しめます。食事をしながらであっても、誰にも迷惑はかけません。
 ホームシアターのだいご味は、映像よりも、むしろ立体的なサラウンド・サウンドにあります。単に「後ろからも音が聞こえて、映画館の雰囲気をまねる」のではありません。正しい条件下におけるサラウンド・サウンドは、映像の世界に飛び込んだように錯覚するほどの臨場感を与えてくれます。例えば、アマゾンの密林のシーンでは、部屋の壁がなくなり、遠くまで空間が広がっている様子さえ体感できます。言い換えると、自宅にいながら非日常の世界を疑似体験できるのです。また、「ブルーレイディスク」の登場により、映像とともに音声の仕様や品質も飛躍的に向上しています。少しの投資と工夫を費やして、映画館を超える「自分の空間」を手に入れるのもまた一興です。

機械オンチにも敷居が低くなっている!

 今も昔も、ホームシアター・サウンドの基本は、五つのスピーカーで視聴者を取り囲み、重低音用の専用スピーカー(低音成分だけなので0.1と数える)を加えた「5.1ch(チャンネル)」の構成です。これは忠実な立体感を再現するうえで有効な方式ですが、設置、接続、調整、操作が複雑で面倒なうえ、高価でもあり、マニアの人以外には敬遠されがちです。
 しかし現在では、音響技術の進歩により、前方に設置したスピーカーのみで、壁の反射を利用したり、人間の錯覚を利用したりして立体音響を感じさせる「バーチャルサラウンド」が登場し、設置の問題を解決しています。また、接続や操作も、映像、音声、機器間の相互連携が1本のケーブルで実現できる接続端子「HDMI」の登場によって、簡略化しました。さらに、良好なサラウンド感を得るうえで難しかったシステムの調整も、付属するマイクをもとに自動補正してくれる機能の登場で、ほぼ解決されるに至っています。

安価で簡単! バーチャルサラウンド

 超お手軽派なら、ラック(テレビ台)がそのままシステムとなっている、3.1chもしくは2.1chのラックシアターがおすすめです。他に必要な機材はテレビとプレーヤー、つまり、手持ちの機材と組み合わせるだけなので、低い出費で始められます。長所は、テレビ台と兼用できるため、設置スペースをとらず、見た目にも違和感がないことです。短所は、立体感に限界があることと、サラウンド効果を得られる視聴ポイントに制限があって、大勢での視聴には向かないことでしょう。テレビの横幅にあったサイズの製品を選ぶことがポイントです。
 機能面で注目すべきは、HDMI端子の搭載です。HDMI対応の機材でそろえると、配線をシンプルにでき、さらに連携操作(リンク)を使えて総合的な操作も簡単になるので、同じメーカーで統一するか、互換性をチェックすることが必要といえます。
 もう少し本格的にしたいなら、フロントサラウンド壁面反射型)がおすすめです。必要な機材や選び方はラックシアターと同じですが、音響効果に違いが出ます。長所は、音声の波を壁面で反射させて利用するので、より5.1chに近い立体効果と、視聴ポイントの広さが得られることです。短所は、設置環境を選ぶことでしょう。部屋の形状や、壁の材質の条件によって、有効な反射が得られないことがあり、こうした状況よってサラウンド効果が低下してしまうことが考えられます。

クオリティーにこだわるなら、5.1ch!

 品位重視派なら、やはり5.1chシステムがおすすめです。長所は、視聴ポイントを囲むようにスピーカーを設置するので、立体感が最も有利なことです。視聴ポイントも比較的広く、ご家族そろって楽しめます。短所は、スピーカーの置き場所や、スピーカーをつなぐケーブルが邪魔になることが指摘されており、特に女性にはウケが悪いようです。
 6台のスピーカーとこれを制御するサラウンドアンプを必要とするため、5.1chは敷居が高く、難しそうに思われるかもしれませんが、それほど心配はいりません。たとえば、5.1ch分の6台のスピーカーをワンセットとし、重低音を担うサブウーファーにアンプを内蔵している製品も数多く登場しています。あるいは、まずは2.1chのバーチャルサラウンドシステムからスタートし、後にスピーカーを追加することで、本格的な5.1chに発展させられるシステムも登場しています。
 製品選びのポイントですが、接続が苦手なら、DVDプレーヤーを内蔵したパッケージ製品を選ぶのも一案です。お手持ちのソフトがブルーレイディスクの場合は、最新の音声フォーマット「Dolby Digital Plus」「Dolby True HD」「DTS-HD High Resolution Audio」「DTS-HD Master Audio」に対応したプレーヤーと5.1chのスピーカーシステムを購入すれば、こだわり派の方にも満足してもらえる、より高品位な音が楽しめるでしょう。

テレビの高画質化だけで満足ですか?

 「地デジ」こと地上デジタル放送やブルーレイディスクの普及で、高精細なハイビジョン映像と、CDを超えるクオリティーの5.1chサラウンド・サウンドが身近になりました。ところが、テレビのハイビジョン化や大画面化で、映像体験は向上する半面、薄型化すればするほど、内蔵のスピーカーは窮屈になって音響面の条件は悪くなり、バランスは崩れる一方です。映画監督のジョージ・ルーカスは、「製作者の意図をくみとるためには、映像と音は50:50(フィフティー・フィフティー)であるべき」と語っています。薄型の大画面ハイビジョンテレビに買い替えたときこそ、音声の充実にもチャレンジしてみてください。そうすることで、映像の世界は、何倍にも楽しくなることでしょう。

著者情報

DAC JAPAN代表/THX認定ホームシアターデザイナー

鴻池賢三

こうのいけ けんぞう

1969年生まれ。大手AV機器メーカ一、米シリコンバレーの半導体ベンチャー企業を経て独立。商品企画・技術コンサルティング業を軸に、情報サイト『All About』をはじめ、新聞、雑誌、テレビなどでアドバイザーとして、また『ビジュアルグランプリ』(音元出版主催)の審査員、日本オーディオ協会「デジタルホームシアター普及委員会」委員を務めるなど幅広く活躍中。日本で唯一のISF認定映像調整技術者でもある。

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