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フードダイバーシティ最前線(後編)~宗教や信条によって異なる「食の禁忌」を正しく知ろう!

加藤裕子(生活文化ジャーナリスト)

 ハラールやベジタリアン対応をするとコストや手間がかかるのでは、という疑問に対し、佐野さんは次のように答える。
「食材や調味料を通常用、ハラール用と二通り揃えるのではなく、すべてハラール用に統一すれば過在庫のリスクも減ります。探せば安い商品もありますし、コストや手間が特別大変ということはないですね。多少割高な価格にはなりますが、お客さんの方も『ハラールだから』『ベジだから』と納得してくれているのが有り難いです」
 集客の中心は客自らが発信するSNSで、「SNSで情報発信をすると5%オフ」というサービスも行っている。昨年11月には2号店となる「MINATO」を横浜にオープンしたが、大阪と違い、観光客より在住外国人の比率が高く、ベジタリアンも含めた日本人客も多い。職場の親睦会などで「ひとりだけムスリムがいるから」と来店するケースもあるといい、より日常性のあるフードダイバーシティの場となっている。
「お客さんの反応がすごく良いので、現地ではどういう日本食が提供されているのかが気になって」と視察に行った佐野さんは、海外でも日本食の需要は高いのに、それに応える十分な味やサービスが提供できていないことを知ったという。「日本国内だけではなく、2021年以降はマレーシアやインドネシアなどを手始めに、海外展開をしていきたい」と佐野さんは意欲を見せている。

横浜スタジアムにほど近い「MINATO」の外観。ハラール料理を求めて、市外からも多くのお客さんが来店するという

日本人は多様な食卓を許容できるか

 日本食という、世界でもユニークな食文化を求めて、大勢の外国人が日本を訪れている。様々な事情で「〇〇が食べられない」という人に「じゃあ、何も出せないね」と言うのか、「そんなこと言わずに食べてみてよ」と押し付けるのか、それとも「だったら、何が食べられる?」と歩み寄るのか。「祭」の佐野さんは「僕は英語は苦手」と言うが、問われるのは必ずしも語学力ではなく、「せっかく日本に来てくれた人が困っているなら助けたい」という、それこそ「おもてなし」のスピリットである。
 何より、食卓を囲んでおいしい料理を食べる楽しさは万国共通だ。ラグビーワールドカップやオリンピック・パラリンピックを前に、ダイバーシティへの待ったなしの対応が迫られているのは「食」に限らないが、「おいしさ」や「楽しさ」を切り口にする「フードダイバーシティ」は日本が多様な世界へと開かれていく第一歩となっていくだろう。

著者情報

生活文化ジャーナリスト

加藤裕子

かとう ひろこ

1970年、東京都出身。早稲田大学政治経済学部卒業。女性誌編集者を経て、1999年フリーに。同年渡米し、ヴィーガンの情報を発信するThe Vegetarian Resource Group(米国メリーランド州)に籍をおき、アメリカの食文化、健康志向などをテーマに取材・執筆。現在は日本在住。著書に『スシ、プリーズ!〜アメリカ人寿司を喰う』(集英社新書)、『食べるアメリカ人』(大修館書店)、『「和の道具」できちんと暮らす すこし前の日本人に学ぶ生活術』(ポプラ社)等がある。

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