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経済万華鏡

緑色は危険色

浜矩子(同志社大学大学院ビジネス研究科教授)

 突然選挙ですね。本来、選挙というものはこんな風に降って湧いたように行われるものではないはずです。
 政治家たちのご都合主義でいきなり選挙戦に突入し、国会での論戦はすっかり棚上げとなる。有権者の信を問うのが選挙なのに、有権者の思いなどには、みじんも気配りをしていない。彼らの頭の中にあるのは、ひたすら、自分たちの延命策ばかり。

 

 これからの選挙戦は一体どう展開するのでしょう。
 妖怪大戦争の様相がどんどん濃厚になっていきそうです。かたや妖怪アホノミクス。「国難」を絶叫するボルテージがどんどん高まっています。絶叫するたびに、国難リストが長くなるようです。でも、本当の国難は妖怪本人であることには気付かない。アメリカにも自分が最大の国難であることに気付かないフワフワヘアの妖怪がいますね。
 自分のことは、自分が一番分からない。自分以外の全員が分かっているのに、自分だけはいつまで経っても和からない。人間界も妖怪界も、この辺の事情は同じのようです。

 

 そうこうするうちに、地平線上にまた別の妖怪が出現してきましたね。その名は、緑の妖怪グリーンモンスター。もっとも、グリーンモンスターといえば、メジャーリーグ野球の名門、ボストン・レッドソックスのホームグラウンドであるフェンウェイパーク球場の巨大フェンスの愛称でもあります。その意味で、緑の妖怪にこの名前を与えてしまうと、レッドソックスファンの皆さんのお叱りを受けそうです。
 名門球団の名物を汚すつもりは毛頭ありません。あのグリーンモンスターとこの緑の妖怪は全く別物です。

 

 ここまで書き進んだところで、”Green for Danger”というタイトルの本の記憶がよみがえってきました。ミステリー短編小説集で、2003年にイギリスで発行されました。実は更に60年ほど以前に同名の長編小説があり、そのタイトルを借用したとのことです。
 緑深き田園風景の中で起こる殺人事件の数々。それらの物語を集めた短編集でした。通常、dangerつまり危険を示すのは赤信号です。ところが、このタイトルは緑色が危険色だと言っています。思えば、確かに緑が鮮やかに目に染みる芝生の中や、体中が緑色に染まりそうな木陰の奥深くには、思わぬ危険が潜んでいるかもしれません。毒蛇とか、蜂の巣とか、得体の知れない爬虫(はちゅう)類とか。

 

 緑の衣の陰には、どんな鎧が潜んでいるのか。これからは、それもしっかり見極めていかなければいけませんね。もちろん、妖怪アホノミクスが次にどんな毒ガスを吹き出して来るかも、引き続き要注意です。気が抜けない日々が待ち受けています。妖怪退治、ステージ2ですね。

著者情報

同志社大学大学院ビジネス研究科教授

浜矩子

はま のりこ

1952年生まれ。一橋大学経済学部卒。三菱総合研究所ロンドン駐在員事務所長等を経て、現在に至る。『グローバル恐慌』『スラム化する日本経済』『ユニクロ型デフレと国家破産』『浜矩子の「新しい経済学」~グローバル市民主義の薦め~』など多数の著書がある。

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