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経済万華鏡

企てが企みに変わる時

浜矩子(同志社大学大学院ビジネス研究科教授)

 企業不祥事が相次いで発覚していますね。神戸製鋼、日産自動車、SUBARU(旧富士重工業)。神戸製鋼では、検査データの改ざん問題が浮かび上がりました。日産とスバルについては、資格不保持者による新車検査が常態化していたことが分かりました。

 

 いずれも、今に始まったことではなかったとのことです。かなり以前から、上記のようなルール違反のやり方が何と「標準手順」になっていたようです。そうした実態が、今になって明るみに出てきたというわけです。
 内部告発がこの展開をもたらしました。つまりは、それだけ、問題各社の従業員の皆さんの社会的責任意識が従来に比べて高まっているということですよね。そのように解釈することが出来るでしょう。その意味では、今回の事態が悪いことずくめのものだとは言えないわけです。

 

 ですが、それにしても、問題が発覚した企業は、いずれも「ものづくり大国ニッポン」を代表するはずのメーカーさんたちです。この体たらくは一体何事でしょうか。日本メーカーに関する「超高品質神話」は単なる作り話だったのでしょうか。
 そう考えて呆れているうちに、「企業」の「企」という字が気になってきました。「企」は「くわだて」の「企」ですよね。そこで、「くわだて」の意味を広辞苑(第六版)で引いてみました。そして、とてもびっくりしました。「くわだてる」について、真っ先に出てきた意味が「つまさきだつ、かかとをあげて伸びあがる」だったのです。その次に「思いたつ、もくろむ、計画する」などが出てきました。

 

 これはこれは。面白いですね。企てる者は、つまさきだつ者、伸びあがる者なり、というわけです。つまり、高みに達しようとする者たちだということですよね。背伸びしなければ、手が届かない。少し無理をしないと到達出来ない。そのようなところを目指そう。そう決意して頑張る。それが企業人だというわけです。このイメージ、決して悪くありませんよね。
 ところが、「企」にはもう一つの意味があります。それは「たくらみ」です。これは、どうもいけません。「悪巧み」に通じるものがあります。確かに、うんと背伸びをして頑張っているうちには、くたびれてくることもあるでしょう。空しい思いに浸って落ち込んでしまう場面も出てくるでしょう。すると、背伸びし切れない実態を隠したくなる。ついつい、高みに到達出来たふりをしたくなる。そんな状態に陥った時、企てが企みに変わるのでしょう。企てから企みに乗り換える。その誘惑に負けた時、企業は、不正の魔の手に握り潰されてしまう。怖いことです。
 日本のものづくり勇士たち、どうか、魔界からのご帰還を!

著者情報

同志社大学大学院ビジネス研究科教授

浜矩子

はま のりこ

1952年生まれ。一橋大学経済学部卒。三菱総合研究所ロンドン駐在員事務所長等を経て、現在に至る。『グローバル恐慌』『スラム化する日本経済』『ユニクロ型デフレと国家破産』『浜矩子の「新しい経済学」~グローバル市民主義の薦め~』など多数の著書がある。

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