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経済万華鏡

今、窒息死が怖い日本経済

浜矩子(同志社大学大学院ビジネス研究科教授)

 日本経済が窒息死しそうだ。このごろ、そう感じられて仕方がありません。政策が、日本経済を呼吸困難状態に追い込んでいく。そのように見えるのです。人々も、モノづくりの世界も、カネの回り方も、政策が作り出す息苦しい重圧に押しつぶされそうになっている。そう感じられるのです。

 

 カネの世界から見ていきましょう。株式市場でも、国債市場でも、何と言っても日本銀行の存在感が大き過ぎます。ですから、株価も国債相場も日銀が許容する範囲内でしか動かなくなっています。そのため、「官製相場」などという言葉がすっかり流行語になっています。
 国債については、このまま日銀の存在感が大きくなり続けると、さすがに目立ち過ぎて具合が悪いというので、ドラスチックな制度変更が持ち出されてくる。そのような展開が懸念されます。どのような制度変更かと言えば、それは、日銀が市場で国債を買うのをやめてしまい、相対で政府から直接新発債を引き受ける方式を取るということです。衣料品のブティックなどが、バーゲン・セールの前にお得意さん向けの「プレ・セール」なんかをやりますよね。あんな感じです。
 これを許してはいけません。我々国民に見えないところで、日銀が政府の注文に応じてカネを政府に献上するというのです。この道は、経済ファシズムに通じてしまいます。

 

 モノの世界では、不祥事の発覚が絶えません。次から次へと、検査データの偽装や資格不保有者による品質管理体制の隠蔽が発覚する。こうしたやり方自体は、今に始まったことではないらしいですね。
 だが、ここにきて相次いで実態が内部告発されているのは、それだけ状況がひどくなっているからではないでしょうか。その背後には、「日本の稼ぐ力を取り戻せ」と煽り立ている安倍晋三政権の政策運営が見え隠れします。成果主義的・近視眼的企業経営を奨励するような政策の方向付け。それが企業をルール違反の辻褄合わせに追い込んでいく。そのような力学が働いていそうな気がします。

 

 ヒトに対しては、「働き方改革」・「生産性革命」・「人づくり革命」の圧力が重くのしかかってきつつあります。何はともあれ、労働生産性の向上が最大目標だ。そこに向かって、労働者という名の働く機械の効率をいかにして、どこまで引き上げるか。政策が、それらのことをひたすら追求しています。
 我々がフリーランス化していくことを、政策が積極的・大々的に推奨しています。こんなことは、世界中、ほかのどこでもやってはいません。フリーランスになって、いくらでも長時間労働をやって下さい。いくらでもご自分の技量・技能を安売りして下さい。そんな調子です。

 

 政策がもたらす呼吸困難による経済的窒息死。その場面が、ひたひたと近づいてくる。ホラー映画みたいです。どうか、ご用心を。

著者情報

同志社大学大学院ビジネス研究科教授

浜矩子

はま のりこ

1952年生まれ。一橋大学経済学部卒。三菱総合研究所ロンドン駐在員事務所長等を経て、現在に至る。『グローバル恐慌』『スラム化する日本経済』『ユニクロ型デフレと国家破産』『浜矩子の「新しい経済学」~グローバル市民主義の薦め~』など多数の著書がある。

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