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経済万華鏡

コロナ対策予算の三つの大問題

浜矩子(同志社大学大学院ビジネス研究科教授)

 政府が新型コロナ対応の施策を次々と打ち出してきますね。何が第一次補正予算の項目で、何が第二次補正予算に組み込まれているのかも分からなくなってきました。政府の一連の対応には、大別して三つの問題があると思います。一に「初めに金額ありき」問題。二に「看板に偽り」問題。そして第三に「外注丸投げ」問題です。

 問題その一とその二は表裏一体です。何はともあれ、金額を膨らませること、予算規模を大きくすることがまず優先される。ふんだんに惜しみなく、気前よくカネを注ぎ込んでいる。このイメージを国民の中に徹底的に刷り込む。この大方針の下に、各省庁に施策案を取りまとめさせる。それを命じられた担当者たちはすっかり焦ってしまいます。
 何とか、示された金額に達するような規模の企画を取りまとめなければならない。そうそう、妙案は浮かびません。焦りが募る中で、どうしても、既存の企画でお蔵入りになっているものを引っ張り出してくる誘惑に駆られます。古びた看板の古びた宣伝文句を塗りつぶして、その上に「コロナシフト」と派手に上書きする。もともとはオリンピック向けの施策だったものを、「感染症対策」と言い換えて持ち出してくる。
 こうした対応の中には、焦りと同時に便乗願望も滲み出ていますね。この際だから、これまでなかなか実現しなかった提案を、どさくさに紛れて、看板を掛け替えて押し込んでしまえ。そのような思惑がうごめいていることも感じ取れます。

 こんなことが、今、本当に求められているのか。今、これをやることがコロナにおびえ、コロナに押しつぶされようとしている人々を助けることに本当につながるのか。このことを自分たちに向かって厳しく問いただす。この姿勢が全く感じられません。ただひたすら、辻褄合わせと数字合わせと便乗商法に邁進(まいしん)している。そのようにしか思えません。
 典型的なのが、「Go Toキャンペーン」なるものです。感染収束後に経済活動が「V字型回復」を遂げることを目指すというので、旅行や外食費、イベント費用などを補助するという構想です。そもそも、ネーミングがふざけていますよね。旅行会社じゃあるまいし。病魔と闘い、生活防衛に必死になっている国民に対して、こんなに軽薄なフレーズを投げつけるとは、何たる無神経さかと思います。
 しかも、この企画には第三の問題の「外注丸投げ」が絡んでいます。業務の実際の執行は、民間事業者に委託することになっていました。そのための業務委託費予算がいかにも大き過ぎるのです。業者選定のための競争入札も、本当に競争させているのか不透明。「Go To」に関しては、その実施のために計上された業務委託費が3095億円という途方もない金額でした。それを野党から非難されて、このキャンペーンは結局、公募中止に追い込まれました。茶番としか言いようがありません。

 茶番ですが、決して笑い飛ばすわけにはいきません。この危機の最中にこんないい加減な対応しか出来ない者たちに対して、我々は腹の底から憤怒の大声を上げなければいけません。

 

著者情報

同志社大学大学院ビジネス研究科教授

浜矩子

はま のりこ

1952年生まれ。一橋大学経済学部卒。三菱総合研究所ロンドン駐在員事務所長等を経て、現在に至る。『グローバル恐慌』『スラム化する日本経済』『ユニクロ型デフレと国家破産』『浜矩子の「新しい経済学」~グローバル市民主義の薦め~』など多数の著書がある。

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