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常識を疑え!

蓮舫だけがなぜ人気なのか?

香山リカ(医師)

 民主党敗北に終わった参議院選挙。

 国会は「ねじれ」状態となり、このままでは法案が成立しない、という深刻な状態が生じている。法案ごとに野党と連立してなんとか乗り切るのか、それとも衆議院を解散して総選挙か。与党・民主党は、政権発足1年足らずで厳しい事態を迎えることになった。

 そんな中、まさに“ひとり勝ち”だったのが蓮舫行政刷新担当相。選挙戦ではプライベートジェットで全国を飛び回り、ほとんど自身の選挙区にはいられなかったにもかかわらず、東京選挙区で過去最高の170万票を獲得しての当選だった。

 幅広い層から支持される彼女だが、とくに20代、30代の若年層や無党派層から熱く支持されているといわれている。その理由を考えてみよう。

 まず、蓮舫氏といえば事業仕分け。エリート官僚たちを前に、要、不要をズバズバと切り分け、食い下がる相手にもひるまず、数字やデータを出すようにしっかり要求。長いあいだ、「公務員の天下りなどおかしなことも多いけれど、向こうは天下の秀才だし太刀打ちできないな」ともやもやした思いを抱えていた人たちは、彼女の冷酷なまでのはっきりしたやり方に、心の中の霧がすーっと晴れるようなカタルシスを感じたのではないだろうか。

 さらに、仕事や生活がうまくいかなくなる人が増える中、最近は「もしかして私の努力が足りないからこうなってしまったのだろうか」と自己責任をひそかに感じる人たちもいたはずだ。そういう人は蓮舫氏の仕分けぶりを見て、「そうだったんだ、やっぱり税金の使い道がおかしかったんだ。私が悪いわけじゃなかったんだ」と胸をなで下ろし、自己肯定感を高めるためにも、彼女といっしょになって「税金の無駄づかい、許せない!」と声を張り上げたのではないだろうか。「あなたが悪いんじゃない、あなたは正義で悪い人はほかにいる」と言ってくれる“私の味方”、それが蓮舫氏だったのだ。

 彼女はこれからもずっと、「あなたは正義の側です」と保障してくれる“私の味方”であり続けてくれるのだろうか。それは何とも言えないだろう。

 蓮舫氏は、情に流されることの少ない、客観的、理性的な考え方の持ち主に見える。公式サイトにも、女性政治家によくありがちな“私生活をチラリと見せて親しみやすさをアップ”といった仕掛けはまったくない。もちろん、子育て中の母親といった敏腕政治家以外の顔も持つことはよく知られているが、だからといって「私とあなたの仲だから」といった甘えが通用する人には思えない。

 仮にもし、自分が蓮舫氏から見て「もっとがんばったほうがいいんじゃない?時間やお金をムダにしすぎているんじゃない?」と判断されるような状況に陥ったとき、それでも彼女のようなタイプは「あなたのために」と手を差しのべてくれるのだろうか。もしかすると、そのときは自分自身も何らかの“仕分け”の対象になってしまうのではないだろうか…。

 そのときどきの強い人、輝く人を支持することで、自分まで強く輝いているような気分を味わいたい。これは多くの人の心にある心理だ。しかし、その姿勢ばかりを続けていると、本当に自分が弱い立場になってしまったときに、自分が支持した“強くて輝いている人”に理解も救済もしてもらえない、という事態が生じることもある。

 多くの人が支持した蓮舫氏は、どんなときでも“あなたの味方”でいてくれるのか。それとも、蓮舫氏に味方をしてもらうためには、自分自身でも一定以上の努力をして輝いていなければならないのか。このあたりをこれからウオッチしていく必要があるだろう。

著者情報

医師

香山リカ

かやま りか

1960年北海道生まれ。東京医科大学卒業。学生時代より雑誌等に寄稿。その後、精神科医として臨床に携わりながら、一般読者向けの著作活動を行う。著書に『女は男のどこを見抜くべきか』(集英社)、『執着 生きづらさの正体』(集英社クリエイティブ)、『「いじめ」や「差別」をなくすためにできること』(ちくまプリマー新書)、『61歳で大学教授やめて、北海道で「へき地のお医者さん」はじめました』(集英社クリエイティブ)など多数。

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