どうなる!? 今後の大学入試 ~英語民間試験、記述式問題の導入断念の裏側で
大内裕和(武蔵大学教授)
〈上記の好事例の認定も適切に活用しつつ、インセンティブの付与を検討すべきである。例えば、国立大学については、第4期中期目標期間における国立大学法人運営費交付金の在り方についての検討状況も踏まえ、優れた取組も促進・評価することができるよう検討するべきである。私立大学については、私学助成のうち、特色ある取組や大学改革を推進する支援スキームを活用し、評価項目の見直し等により、他の模範となる優れた取組を促進することを検討すべきである。また、公立大学については、好事例の認定結果を設置者や設立団体に対し、法人(大学)評価や資源配分の参考に活用することができる旨通知することを検討すべきである〉
こうした財政的インセンティブの付与は、問題を一層深刻化させる危険性があります。
その第一は、入学者選抜における大学の自主性を奪う危険性です。入学試験は各大学が定めたアドミッション・ポリシーに沿って、主体性をもって実施されるべきものです。ですが、そこに財政的インセンティブが入り込むと、厳しい財政状況に置かれている大学の多くは主体性よりも成果報酬を優先して英語民間試験の活用や記述式問題の導入・拡充を行う可能性があります。
第二は、先述した「受験生の地理的・経済的格差」を拡大する危険性です。提言では「経済的に困窮している受験生」「障害を持った受験生」「日本語が不自由な受験生」などが大学進学において不利な状況にあることを指摘し、進学率の地域・男女格差にも触れたうえで公平性を目指す提案がなされています。しかし、財政的インセンティブによる英語民間試験の活用促進は、それらとは相反します。真に入試の公平性を求めるなら、むしろ教育の市場化や企業化にブレーキをかけることが必要でしょう。
第三は、入学試験の質を低下させる危険性です。英語民間試験を活用するか否か、記述式問題を導入・拡充するか否かは、それが試験問題として優れているかで判断・決定されるべきですが、そうしたことにも影響する可能性は高いでしょう。
◆◆
英語民間試験が質として優れていたり、記述式問題の出題が実務上可能であれば、インセンティブなどなくとも各大学は自ら進んで採用するはずです。それよりも今の深刻な問題は、教養部の廃止や国立大学の法人化、財政事情による人員削減のため、試験問題を十分な時間をかけて作成し丁寧に採点することが、多くの大学で困難となっている状況です。若者に質の高い教育を提供するなら、各大学が自ら立てたアドミッション・ポリシーに則した入学試験の実施は必要不可欠でしょう。それらを可能とする人員・体制整備に向けて予算拡充を図ることが、何よりも重要だと私は思います。