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連載

新型コロナで学校がかつてない危機に 〜今こそ健康と教育の両立が必要

第22回

大内裕和(武蔵大学教授)

 2021年9月7日、文部科学省は「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた新学期への対応等に関する状況調査」の結果を発表しました。調査対象は公立の幼稚園、小学校、中学校、高校、特別支援学校などを所管する1757の教育委員会で、それぞれ夏休みの終了時期が異なるため、9月1日時点での調査となっています。

 それによると、幼稚園については所管する教育委員会の11.5%が「夏休み延長や臨時休校を実施・予定している」と回答しました。また小学校では12.4%、中学校12.8%、高校19.2%が同回答でした。「分散登校や短縮授業を実施・予定している」との回答は、幼稚園11.9%、小学校23%、中学校22.9%、高校は34.2%で、夏休み延長や臨時休校よりも全体にやや多めの結果でした。

 こうした新学期対応が行われるのは、10代以下の子どもたちへの新型コロナ感染が急速に広がっているからです。厚生労働省によれば10代以下の7月中旬(21日までの1週間)の感染者数は3450人でしたが、8月中旬(18日までの1週間)は2万2960人と1カ月で6倍以上に増加しています。

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 学校現場での新型コロナ対策としては、20年3月2日から「全国一斉休校」が実施されたのは周知の通りです。当時、感染によるリスクが高いのは主に高齢者と分析されていましたし、子どもたちの「教育を受ける権利」を守る視点から、私はこの全国一斉休校に反対しました(連載第4回「安倍首相『全国一斉休校』要請から見えてくるもの」)。この時点での自分の判断は、今でも正しかったと思っています。

 しかし、今回は違います。これまでは「子どもや若者は新型コロナに感染しにくく、重症化も少ない」というのが一般的な考え方でした。ところが「第5波」と呼ばれる21年7月頃からの感染爆発は、デルタ株を中心とする変異したウイルスが主体となっています。デルタ株は伝播性・感染性がとても強く、子どもや若者にも感染し、重症化する危険性が高まっています。いきなり全国一斉休校という対策をとる必要はありませんが、休校を含めて学校教育活動を縮小することも、場合によってはやむを得ないと考えます。

 この状況で学校教育に求められるのは、子どもたちの健康と生命を守ること(日本国憲法第25条「生存権の保障」)と、子どもたちの学習(同第26条「教育を受ける権利」)を両立させることにあります。両立といっても、この2つは順序が重要です。まずは健康と生命を守ることが優先されるべきで、学校は感染対策を十分に行うことが求められます。

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 具体的には、不織布マスクの着用を徹底させることでしょう。

 私がツイッターで学校現場の関係者から情報を集めたところ、ウレタンマスク着用で通学している生徒に関する報告が複数ありました。しかし、ウレタンマスクは不織布マスクに比べて飛沫防止効果 が極めて低いことが分かっています。ドイツでは公共の場や交通機関等で医療用マスクの着用が義務付けられており、ウレタンマスクなどの着用は罰則付きで禁止されています。子どもたちが集まる学校では、不織布マスクの着用を徹底すべきでしょう。情報不足や経済的理由から指定外のマスクを着用している生徒への対策として、すべての学校に不織布マスクを一定数常備すべきだと思います。

 また「40人」を基本とする学級人数では、教室内の密状態を避けることは至難です。しかしオンライン授業を柔軟に取り入れたり、分散登校によって学級人数を「20人」にしたりすれば、相当緩和できます。分散登校や短縮授業によって、共働きや一人親家庭の小学生を預かる学童保育などが密になる場合は、より広いスペースを確保するなどの工夫が求められます。加えて、教室をはじめ校舎内全体の換気の強化も重要です。

 学校外での取り組みとしては、教職員や児童・生徒へのPCR検査をより幅広く行うことです。コロナ感染で気を付けるべきポイントの一つは、無症状・無症候の隠れ感染者(無症状病原体保有者)によるウイルスの拡散です。感染爆発を抑えるには、この隠れ感染者の発見と保護が欠かせませんが、政府の認識や対策が甘かったことが事態の深刻化を招きました。現状で最も確実な方法はPCR検査です。教職員や児童・生徒へのPCR検査を幅広く行うことで、学校での感染リスクを抑えることができると思います。

 学習方法への対策では、オンライン授業がきちんと行える環境を整備することが大切です。インターネットにつながったパソコンやタブレットなどの端末機器を使うオンライン学習の環境は、学校や家庭によってとても格差が大きいのが現状です。私が知る中でも全教員に端末機器が行き渡っていない学校、通信環境が整っていない家庭が一定数存在しています。学校と子どもたちの自宅をつなぐ設備や環境を精査し、不足部分は政府や自治体の予算を活用して整備 を進めることが必要です。また、分散登校や短縮授業で学童保育を利用中の児童がオンライン学習を希望しても、施設に必要な設備が整っていない場合もあるので、学校側が責任をもって対策する必要があるでしょう。

 教員にとっても、オンライン学習環境の整備が負担になっているケースは少なくありません。特にICT(Information and Communication Technology ; 情報通信技術)担当教員は、多様な業務が集中し、激務になっているとしばしば耳にします。学校や行政はICT関連の予算を増やし、必要に応じてICT支援要員やサポートスタッフを現場に派遣することも考えるべきです。

 オンライン授業は小学生――特に低学年の子の場合、親や兄弟など保護者の手を借りずに受けることは難しいと予想されます。そうした場合の保護者に向けた対策、オンライン授業をサポートする学習支援員の増員などの対策を講じることが求められます。

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 オンライン授業の質を向上させるためには、それに適した教材の選択や説明の仕方、生徒との対話の方法など、対面授業とは異なる工夫と準備が必要です。しかし、教員の労働環境は極めて厳しい状況です。以前ご紹介したように、日本の教員の労働時間は小学校で週54.4時間、中学校で週56時間と、OECD(経済協力開発機構)加盟国平均の38.3時間(中学校)を大きく上回り、38カ国の先進国・地域の中で最長となっています(連載第16回「学校の先生になりたい人が減っている!?」)。

 この労働環境は、教員が日々の授業をしっかり準備することさえ困難な現状を示していると思います。新型コロナが登場する前からそうした状況なので、新たな教育スタイルであるオンライン授業の準備を行う余裕を生み出すことは容易ではないと思います。そこで教員の時間確保のためにできることを考えてみました。

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 たとえば感染対策として多くの学校で教員が行っている消毒作業は、一刻も早く専門業者に委託すべきでしょう。分散登校の家庭学習日に在宅ができない生徒を学校で受け入れる業務などにも、新たな人員を増やすべきです。

 そして最も有効なのは、部活動時間の削減です。緊急事態宣言が広がる中、部活動の中止や縮小は一定程度行われていますが、「対外試合がある」「発表会がある」「大会出場をめざしている」などを理由に、多くの部活動が現在も続けられています。部活動は通常の授業と違い感染対策がまちまちなので、感染リスクが高く、すでに数多くのクラスターが発生しています。また、分散登校や短縮授業など「教育課程」の縮小を余儀なくされている中で、教育課程外の部活動を継続しているのは大きな問題だと思います。部活動の中止や活動時間削減によって、教員の時間を確保すべきです。

 オンライン教育の充実に加えて、学習指導要領(国が定めた教育カリキュラムの統一基準)を弾力化し、内容の精選を行うことも重要です。新型コロナにも対応しつつ、学習指導要領のすべてを消化させることは困難です。20年の全国一律休校の後のように、例年通りの授業時間の確保を基本とすれば極度の詰め込み教育は避けられず、子どもたちが授業内容を十分に理解することができなくなる危険性が高まります。

著者情報

武蔵大学教授

大内裕和

おおうち ひろかず

1967年、神奈川県生まれ。東京大学大学院教育学研究科博士課程単位取得。松山大学教授、中京大学教授を経て2022年度より現職。「入試改革を考える会」代表。「奨学金問題対策全国会議」共同代表。著書に「ブラックバイトに騙されるな」(集英社)、「教育・権力・社会」(青土社)、「ブラック化する教育 2014-2018」(青土社)などがある。

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