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連載

24年ぶりに帰ってきた新天地で思う、今までの自分とこれからの自分

第29回

大内裕和(武蔵大学教授)

 学生たちと活動を開始したことによって、私はそれまで以上に学生生活の困難をより深く知るようになりました。特に学生アルバイトの実態が、自分自身の学生の頃とは全く違っていることに気づき、13年6月に「学生であることを尊重しないアルバイト」のことを「ブラックバイト」と名づけました。以降は、「奨学金」と「ブラックバイト」という2つのテーマを切り口に活動を進めました。14年には愛知県の若手弁護士の皆さんと「ブラックバイト対策弁護団あいち」を結成し、学生のアルバイトについての相談、高校・大学でのワークルールの「出前授業」の実施などに取り組みました。

 奨学金については活動開始以後、「貸与型奨学金の有利子から無利子への移行」は着実に進み、17年度には「給付型奨学金の導入」が実現しました。アルバイトについても、ブラックバイトへの注意喚起や学生向けのアルバイト相談窓口の設置などが進んでいます。まだまだ十分とは言えませんが、活動は着実に成果を上げています。

 1998年4月に大学教員として就職してから、松山大学で13年、中京大学で11年勤務しました。愛媛県、愛知県という東京以外の「地方」で過ごした24年間は、自分自身の「東京基準」が日本国内の限られた地域にしか当てはまらないことに気づき、それを自ら問い直す期間でもありました。

 また、90年代半ばをピークに労働者賃金や世帯年収が減少し、2022年現在でも1990年代半ばの水準に戻っていない日本経済の厳しい現実によって、就職してから現在に至るまで「右肩下がり」の時代を私は経験しました。それは60~72年までの高度経済成長、75~90年までの経済の中成長とそれにともなう日本の経済大国化を社会人として経験した世代とは、全く違う時代を私が生きてきたことを意味します。

 大学教員になって以来、「右肩下がり」経済の中で多くの学生の声に耳を傾け、彼らが置かれている厳しい現実を理解しようとしてきたこと、また彼ら自身のメッセージからさまざまなことを学んできたことが、本連載「若者のミカタ」につながっています。これまで出会ってきた多くの若者に、私は心から感謝しています。

 24年ぶりに帰ってきた東京は、かつて私が過ごしていた東京とは大きく違っているはずです。新天地との新たな出会い、そして若者との新たな出会いからこれからも学び、自分なりのメッセージを社会に発信していきたいと考えています。

著者情報

武蔵大学教授

大内裕和

おおうち ひろかず

1967年、神奈川県生まれ。東京大学大学院教育学研究科博士課程単位取得。松山大学教授、中京大学教授を経て2022年度より現職。「入試改革を考える会」代表。「奨学金問題対策全国会議」共同代表。著書に「ブラックバイトに騙されるな」(集英社)、「教育・権力・社会」(青土社)、「ブラック化する教育 2014-2018」(青土社)などがある。

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