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生活保護世帯の大学進学はなぜ反対される? 〜高学費と大学等修学支援法の問題点

第37回

大内裕和(武蔵大学教授)

 それではどうすればよいでしょうか? 高等教育機関への進学において人々の「分断」を引き起こさないためには、高等教育予算を増額して、大学・短大・専門学校の学費そのものを引き下げることが何よりも重要です。政府は12年、高校・大学までの段階的な無償化を定めた国際人権A規約(13条2項b、c)の適用留保を撤回し、そのことを国連に通告しています。高等教育の段階的無償化は国際公約となっているのです。

 大学・短大・専門学校の学費を一気に無償化することは、その財源の大きさから言っても容易ではないでしょう。まずは学費を半額にすることを目指すべきです。

 新型コロナウイルス感染症による経済活動の混乱(コロナ災害)下では、学生による学費減免要求運動が広がりました。その影響を受けて20年5月11日、立憲民主党、国民民主党、日本共産党、社会民主党の野党4党は「コロナ困窮学生支援法案」を衆議院に提出しました。ここには授業料の半額免除(実施した大学には免除分を国が負担)という画期的な内容が含まれていました。コロナ災害という特別な状況ではありましたが、この法案を手がかりとして学費半額への道筋を考えることができると思います。

 現在の大学・短大・専門学校の学費負担は、多くの世帯にとって限界に達しています。現在の学費を半額にすれば、「分断」を生み出すことなく、すべての世帯出身者の高等教育機関への進学を支援することができます。

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 もう一つの方法は、大学等修学支援法の改正を実現することです。支援対象が年収380万円未満世帯で、全学生の約9%というのは対象が限定され過ぎています。また対象となっても年収条件による支援金額の多寡の差が大きすぎて、場合によっては世帯年収の上下が入れ替わってしまう逆転現象が起きる可能性がありますから、この点も是正すべきです。

都留文科大学の後藤道夫名誉教授によると、3人世帯の生活保護費に相当する「最低生活費」の全国平均年額は約272万円です。勤労控除と公租公課(税や社会保険料)分を配慮した倍率を1.4とすると381万円となります(労働者福祉中央協議会 教育費負担軽減へ向けての研究会報告資料「中等後教育とジョブへの職業準備 〜賃金水準低下と就学保障」、2022年7月4日)。昼間学生本人の1年間の学費・生活費の平均値は181万円、私立大学で下宿等の場合は1年間の学費・生活費は241万円です(日本学生支援機構令和2年度学生生活調査」)。

 世帯分離を行った3人世帯の生活保護「最低生活費」と、1人の大学生の学費・生活費を合わせると583万~622万円に達します。3人が生活保護水準で暮らし、子ども1人を大学に通わせると1年間で583万~622万円のお金がかかるのです。

 そう考えれば、大学等修学支援法について、現在支援対象となっている380万円未満世帯までは一律に学費を全額免除とし、支援対象も現在の世帯年収600万円程度まで拡大することが望ましいでしょう。ここまで支援対象を拡大することができれば、生活保護世帯の大学進学をバッシングする社会的基盤は相当程度弱くなると予想できます。

 生活保護世帯出身者の大学進学の権利を保障し、それと同時に社会の分断や生活保護バッシングを促進しないためにも、全世帯を対象とする学費の引き下げ、大学等修学支援法の改善を行うことが強く求められています。

・ツイート、ブログ出典一覧(2022年12月27日時点)

著者情報

武蔵大学教授

大内裕和

おおうち ひろかず

1967年、神奈川県生まれ。東京大学大学院教育学研究科博士課程単位取得。松山大学教授、中京大学教授を経て2022年度より現職。「入試改革を考える会」代表。「奨学金問題対策全国会議」共同代表。著書に「ブラックバイトに騙されるな」(集英社)、「教育・権力・社会」(青土社)、「ブラック化する教育 2014-2018」(青土社)などがある。

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