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連載

東京医大の減点問題と、母

雨宮処凛(作家、活動家)

 どうしてお母さんは女なのに、オッサンの代弁者のふりをするの、と。どうして自分もおかしいと思うって、疑問だけでも口にしてくれないの、と。母を見ていると、女という存在の不甲斐なさ、その立場の理不尽さに、自分の近い未来を想像してやりきれなくなった。そしてそれに抵抗しない母に苛立った。

 

 そんなふうに、一番身近な同性である母の絶望と諦めはしっかりと私に受け継がれ、私も長いこと口をつぐんでいた。男社会を脅かさず、いろんなことを適度に諦める態度をとることは、いつからか自然にできるようになっていた。それが「大人になる」ことだと思っていた。

 だけど、それは違うのだ。

 私には子どもはいないけれど、次の世代に伝えるべきは「女だから仕方ない」ではなく、冒頭のスピーチのように、女だからって諦めなくてもいい、自分で自分の人生を切り開いていいってことなのだ。この国の女が我慢し、忍耐に忍耐を重ね、それでもいつかわかってくれると期待しながら待ち続けた果てに、東京医大の「女は一律減点」がある。

「我慢していればいつかわかってくれる」なんて大間違いだ。男社会は女の「沈黙」を「容認」と捉え、結局、女が我慢すればするほど増長し続けてきた。

 今、「女はこうあるべき」という昭和・平成の呪いから、多くの女性たちは解放されつつある。諦めを再生産しないことが、少なくとも自分の世代の義務だと思うのだ。

次回は10月3日(水)の予定です。

著者情報

作家、活動家

雨宮処凛

あまみや かりん

1975年、北海道生まれ。作家、活動家。反貧困ネットワーク世話人。バンギャル、右翼活動家を経て、2000年に自伝的エッセー『生き地獄天国』でデビュー。自身の経験から、若者の生きづらさについて著作を発表する傍ら、イラクや北朝鮮へ渡航を重ねる。その後、格差や貧困問題について取材、執筆、運動を続ける。『生きさせろ! 難民化する若者たち』でJCJ賞受賞。著書に『一億総貧困時代』『「女子」という呪い』など多数。

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