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奨学金返済問題への関心が再加熱 〜マスコミ報道の広がりから国会審議の場へ

第80回

大内裕和(武蔵大学教授)

 たとえば12年には、有利子奨学金の利用者が91万6860人とほぼピークに達しており、24年の62万3000人よりもはるかに多い状況でした。日本学生支援機構によると奨学金の「平均返還年数」は約17年ですから、その時期に利用された人の多くは現在も返済を続けていると予想されます。しかも、貸与終了時点からおおむね5年ごとに利率を見直す「利率見直し方式」を選んでいれば、今回の金利上昇の影響を受けることになります。

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 金澤さんのコメントは、奨学金制度の改善が進む一方で既利用者の返済困難が続いていること、特に有利子奨学金が拡大した時期の利用者が現在も返済を続けていることの重大さと、彼らが今回の金利上昇の影響を受ける可能性を私に改めて気づかせてくれました。奨学金返済が長い場合には20年も続くことの、その人の人生と社会全体に与えるインパクトの大きさを一人でも多くの人に伝えることが、奨学金制度改善へ向けて重要な課題だと再認識しました。

 昨今に見られる有利子奨学金利用の減少が、奨学金制度の改善だけでなく返済負担を警戒して利用を忌避する傾向の表れで、その裏で学生アルバイトの増加を生んでいることについての議論も興味深いものでした。まず金澤さんから「過酷なバイトと学生生活の両立が困難となることで、精神的に追い込まれたり、病んでしまったりする学生が(周囲に)増えている」という趣旨の発言があり、それを受けて私は、トリプルワークで疲れ果てて授業中起きていられず課題にも取り組めないことに苦しんでいる学生が、「周囲も同じように大変だから『大変だ』なんて言えない」と語った事例を紹介。それを受けて、竹信さんからは「『労働力不足』とか言っているけど、労働力を壊しているわけですよね」との意見が続きました。

 制度が改善されてなお、金融業的な奨学金のあり方が学生アルバイトを助長し、学生の多くは常に「労働力」であることを強いられています。しかも、「それを当然のこととして多くの学生が『内面化』しているために、その状況に抗おうとか、声を上げようとか、誰かとつながろうとか思っても、自分のことを客観的に認識し、声を上げる余裕すらない」(番組での金澤さんの発言)というのが、多くの学生の現状だと思います。

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 私は13年に、「学生であることを尊重しないアルバイト」のことを「ブラックバイト」と名づけました。26年現在、アルバイトの過酷化、インターンシップによって就職活動の早期化・長期化する中で、学生生活全体が「学生であることを尊重しない」状況となり、高等教育の機能不全が進行しています。このままでは彼らが卒業後、本格的に働き始める前に「労働力を壊す」ような深刻な事態になりかねません。

 今回の番組「金利上昇で膨らむ 奨学金地獄」では、労働問題を専門とする竹信さんと現役学生の金澤さんの見解によって、有利子奨学金の返済負担増の問題から、現在の学生を取り巻く深刻な状況を浮き彫りにできたように思います。

 奨学金問題対策全国会議の記者会見をきっかけに、奨学金問題は新聞報道、国会質問、Webメディアなどの注目を再び集めるところとなっています。今後も関心の広がりが、奨学金の返済負担の軽減や学生・若者支援の強化へとつながることを期待したいと思います。

著者情報

武蔵大学教授

大内裕和

おおうち ひろかず

1967年、神奈川県生まれ。東京大学大学院教育学研究科博士課程単位取得。松山大学教授、中京大学教授を経て2022年度より現職。「入試改革を考える会」代表。「奨学金問題対策全国会議」共同代表。著書に「ブラックバイトに騙されるな」(集英社)、「教育・権力・社会」(青土社)、「ブラック化する教育 2014-2018」(青土社)などがある。

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