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連載

東京・渋谷のホームレス女性殺害事件〜深刻化する女性たちの窮状

雨宮処凛(作家、活動家)

 これを読んだ瞬間、私は彼女が死後、侮辱されたような、2度殺されたような気持ちになった。撲殺された被害者でありながらも、こうした身体的特徴が描かれることに心底怒りを覚えた。そこからは、事件の被害者だろうとホームレスだろうと高齢だろうとなんだろうと「すべての女体は俺たちのエンタメ」という男社会のメンタリティーが匂い立つからだ。

 そもそも、この遺体の特徴について、なぜ情報が漏れたのだろう。想像するに、男性警察官が男性記者に言ったのではないか。その時、どんなふうに、どんな口調でその情報は漏れ伝わったのだろう。そしてあの記事が出るまで、どれほどの男性がその情報についてどんな顔で口にしたのだろう。

 女性というだけで、ここまで晒し者になる。女性とホームレスという、二重の差別がそこにある。なぜなら、私たちは今まで一度も「殺された男性の遺体には、包茎手術の跡がありました」なんて情報、聞いたことがないからだ。「頭部に植毛手術の跡がありました」だって聞いたことがない。そのほか、入れ歯とか盲腸の手術跡とかいろんなものがあるだろうけど、「男の肉体」について、そんな情報一度も聞いたことがない。


 デモの日、渋谷の街をキャンドルを持って葬列のように歩きながら、殺された女性のことを考えた。ある女性が掲げていたプラカードには、「彼女は私だ」とあった。「他人事じゃない」。この日、多くの女性が口にした。非正規で働いてきた女性、コロナで仕事を切られた女性たちも多く参加していた。

 このデモを主催した団体の一つは、渋谷・新宿周辺に住む女性ホームレス団体「ノラ 」。多くの人は、女性たちのホームレス団体があることすら知らないだろう。苦しい中だけど、女性たちは助け合って生きている。決して「弱い」だけの存在ではない。

 渋谷の街をキャンドルを持ったデモ隊が歩く光景は、クリスマスイルミネーションとマッチして綺麗だった。だけど、そんなキラキラしたイルミネーション瞬く渋谷の街は野宿者を排除し続けてきた歴史があって、Oさんもそんな渋谷で「排除」された一人だったという事実を思うと、綺麗なイルミネーションが、まったく違ったものに見えてきた。

次回は2月2日(火)の予定です。

著者情報

作家、活動家

雨宮処凛

あまみや かりん

1975年、北海道生まれ。作家、活動家。反貧困ネットワーク世話人。バンギャル、右翼活動家を経て、2000年に自伝的エッセー『生き地獄天国』でデビュー。自身の経験から、若者の生きづらさについて著作を発表する傍ら、イラクや北朝鮮へ渡航を重ねる。その後、格差や貧困問題について取材、執筆、運動を続ける。『生きさせろ! 難民化する若者たち』でJCJ賞受賞。著書に『一億総貧困時代』『「女子」という呪い』など多数。

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