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もし、貴女がホームレスになったら〜女性が身を守るためにしている数々の「やむをえない」選択

雨宮処凛(作家、活動家)

 と、ものすごくもやもやしたのだが、当時の私にはそれを言語化する力もなく、またヤンキー全盛期の世間は「乱暴さ」が「男らしさ」と直結するような価値観に満ちており、実際、周りにもその手の話は噂レベルではよくある話で、もやもやしながらもそのようなことは忘れていき、気がつけば10代でなくなり、いろいろしているうちにあっという間に30年以上が経過。で、冒頭に書いたような「もし、自分が路上に出たら」と想像した時に「やっぱ、より安全そうな男とつがいになるかも」などと考えていたところ、突然、10代の時に読んだ少女たちの投稿を思い出したという次第である。

 今、思う。

 それは確実に、犯罪被害だと。彼はそこから「救ってくれた」素敵な男などではないと。あらかじめ、その男を選択するしかないような状況に置かれ、自身の身を守るためにやむなくした決断であると。その彼と付き合えてハッピー、と思うのは、自身に起きた悲劇を正当化したいという心理が働いているのかもしれないと。そしてマトモな人間であれば、「その場で彼女を解放、安全な場所まで送って自分は自首」が正解だと。

 同時に思うのは、そういう話が珍しくなかった当時、どうして大人たちは「それは被害である」と伝えてくれなかったのかということだ。例えばそのティーンズ誌自体が、そういうメッセージを送ることだってできた。しかし、私の記憶にある限り、そのようなものを目にしたことはない。

 そう思うと、つくづく私たちは守られていなかった世代だと思う。当時、中高生のセックスは大人たちからは飲酒や喫煙のように「やったら不良」というレッテルを貼られるもので、「10代の身体を大切にする」「子どもたちの心身を守る」ような性教育はすっぽり抜け落ちていた。

 だけど、当時の大人たちに「マトモな性教育」を求めること自体、酷な気もする。

 セクハラは当たり前で「男の育休」なんて影も形もなく、空港には「いってらっしゃい、エイズに気をつけて」と、男性が海外で買春をすることが前提のようなポスターが貼られていた時代。

 そう思うと、30年で、日本社会は少しは変わったのかもしれない。

 2022年の年のはじめ、いろいろと思い出して、そう思ったのだった。

著者情報

作家、活動家

雨宮処凛

あまみや かりん

1975年、北海道生まれ。作家、活動家。反貧困ネットワーク世話人。バンギャル、右翼活動家を経て、2000年に自伝的エッセー『生き地獄天国』でデビュー。自身の経験から、若者の生きづらさについて著作を発表する傍ら、イラクや北朝鮮へ渡航を重ねる。その後、格差や貧困問題について取材、執筆、運動を続ける。『生きさせろ! 難民化する若者たち』でJCJ賞受賞。著書に『一億総貧困時代』『「女子」という呪い』など多数。

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