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俳優や有名料理店店主、学生による性加害 〜逮捕や「謹慎」がどこか「運次第」「空気次第」という現実にモヤる

雨宮処凛(作家、活動家)

 なぜなら、「モラル」とか「女性をモノ扱いせず対等に接する」とかのアドバイスがまったくもってひとつも通じない人たちがこの世には大勢いるからである。そのような人に何をどこから言えばいいのか、まずそこからわからない。それは彼らが「そんなことを理解してもなんのメリットもない」と思っているからで、であれば、そういうタイプには「こういうことをしたらこうなる」というリスクを見せつけることしか抑止力にならないのでは、と思うのだ。

 そしてここまで書いてきたことでもうひとつ、非常にモヤモヤすることがあるので書いておきたい。それは、性加害やハラスメント、暴力などの加害者の扱いについて、刑事事件になった場合を除いて「明確な基準」がないことだ。

 例えば野球選手が中絶を迫った女性が自殺未遂を起こしても変わらず試合に出続けられるのに、芸能人の不倫や女性トラブルは時にワイドショー挙げての大騒ぎとなり、謹慎が続くケースは多い。

 同じ芸能人でも、立場によって随分違う。例えば16年、『新婚さんいらっしゃい!』(朝日放送テレビ)でおなじみの桂文枝(桂三枝)氏の不倫騒動がメディアで騒がれたが、テレビ局は「引き続き、出て頂く」と明言。また、19年にはその不倫相手が自宅で睡眠導入剤など多くの薬を服用して亡くなったことが報じられたが、それでも22年3月まで、桂文枝氏は「新婚さん」の司会をつとめた。

 また、宮崎県知事戦への出馬を表明したタレントの東国原英夫氏についても思うところがある。

 1998年に東国原氏がサービスを受けた風俗店の女性が16歳だったことが発覚し、「淫行騒動」と騒がれ謹慎となったことは多くの人が知るところだ。が、これは現在だったら、確実に「復帰などありえずアウト」案件だと私は思う。なぜなら、「満18歳に満たない者」が性的サービスに従事していることは「人身取引」にあたる可能性が高いからだ。ヒューマントラフィッキングといわれる人身取引は重大な人権侵害であり、麻薬に次ぐ世界第2の犯罪産業である。「人身取引」と言うと海外の話、もしくは外国人の話でしょ、と思うかもしれないが、日本で人身取引に取り組む団体に来る相談のうち4割が日本人からのものだ。

 が、まだまだ人身取引という言葉も知られず、「男の性欲」周りに今よりずっと世間が寛大だった90年代、東国原氏は「謹慎」期間を経て復活。今に至るまでテレビに出続け、宮崎県知事にまで登りつめた。

 そんな、「何かをやらかした人の扱いの基準がまったくもって適当」というのが、私がもっともモヤモヤするところなのだ。

 ある人は笑って許され、ある人は厳しく断罪されてすべてを失う。ある人は謹慎で済み、ある人は永久追放となる。それを決めるのが「世間の空気」っぽいところにもさらにモヤモヤする。単なる「運次第」となっている限り、再発防止のルールなど決して作れないからだ。

 逮捕者が出ている性暴力事件だってそうだ。同じことをしても逮捕されていない加害者が山ほどいることを私たちは知っている。加害者の中には「みんなやってるのに自分は運が悪かった」と思っている者もいるだろう。現に伊藤詩織さんへ性加害をしたと報道されている山口敬之氏は、逮捕状まで出ているにも関わらず捕まっていない。これが殺人だったら「こっちは見過ごされてあっちは逮捕」なんてありえないのに、性暴力の場合、そんなことがまかり通っている。

 この夏、注目された数々の事件。このモヤモヤについて、あなたはどう思うだろうか。

著者情報

作家、活動家

雨宮処凛

あまみや かりん

1975年、北海道生まれ。作家、活動家。反貧困ネットワーク世話人。バンギャル、右翼活動家を経て、2000年に自伝的エッセー『生き地獄天国』でデビュー。自身の経験から、若者の生きづらさについて著作を発表する傍ら、イラクや北朝鮮へ渡航を重ねる。その後、格差や貧困問題について取材、執筆、運動を続ける。『生きさせろ! 難民化する若者たち』でJCJ賞受賞。著書に『一億総貧困時代』『「女子」という呪い』など多数。

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