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親を「国際ロマンス詐欺」から守るには

雨宮処凛(作家、活動家)

 と、ここまで書いて思い出した人がいる。それは17年に亡くなった元赤軍派議長の塩見孝也氏。70年代に「世界同時革命」とかを目指していた人で、なんと亡くなる直前までそれを本気で夢見ていた。ちなみに塩見さんは獄中20年で1989年に出所しているのだが、晩年はシルバー人材センターで駐車場管理員として勤務。職場では同僚に「議長」と呼ばれて人気者だったらしく、ある日、私に「シルバー人材センターユニオンを作りたい」と相談してきた。職場の労働問題を、組合を作って改善したいということだったが、それに続く言葉を聞いて耳を疑った。なんと塩見さんは「そのユニオンを足がかりとして、ゆくゆくは世界同時革命を目指したい」と断言したのだ。平成の終わりに。すでに70代になっていた元赤軍派議長が。

 さて、そんな塩見さんがインターネットなるものに接続したらどうなるか。

 迷惑メールを真に受けるのである。例えば「あなたの精子をください」とか、そういうアレだ。その手のメールを見て驚いた塩見さんは、知人男性に「最近の女性は、こんなに解放されているのか?」と真剣に尋ねたという。解放――なんとも赤軍派らしい台詞だ。

 そんな塩見さんは晩年まで頑なにmixiを使い続け、投稿するたびに「mixiに論文を書いたから読んでくれ!」と電話してきたのだが、私はどうしても、「もう誰もmixiなんか使ってないよ」の一言が最後まで言えなかったのだった。

 何も知らずにmixiに論文を投稿し続ける塩見さんの姿は、誰もいない宇宙空間で大声でアジりつつ、誰にも届かないビラを撒いているようで、なんだか「孤高」にすら見えた。そういえば、「マイミクさん」という言葉を使うときの塩見さんはいつも照れくさそうで、ちょっとキュンとしたことを思い出した。

 まぁ、塩見さんの場合は、年齢だけでなく「獄中20年」というハンデもあったのだが、かように、お年を召した方々とネット・SNSの付き合い方は難しい。

「使い方がよくわからない」だったら子どもをはじめ、若い世代に聞けるだろう。が、これが「ネットで知り合った異性とやり取りしている」状態だったら。子どもは当然、人には見られたくない。このような事情によって被害が拡大してしまうのだろう。

 ちなみに国際ロマンス詐欺は、コロナ禍で急増。国民生活センターへの相談件数も19年度は全国で5件だったのが、21年度には192件と40倍近くになっているという。

 もし、高齢の親がこういうのにひっかかり、老後の資金を根こそぎ奪われたら。

 自分の親が無一文になって困るのは現役世代の子どもたちだ。親がネットの怖さを知らないのは仕方ない。何しろ糊の代わりにご飯粒を使っていた世代だ。

 だからこそ何かあっても親を責めず、まずはともに被害届を出しに行くのが得策だろう。

 そして普段から、気をつけるべきは電話がかかってくる「オレオレ詐欺」だけではなく、メールやSNSにも膨大な数の詐欺師が潜んでおり、虎視眈々と老後の資金を狙っていることを口を酸っぱくして言っておくべきだろう。それだけではない。知人や有名人を名乗っていてもそれが本人だとは限らないこと、特に有名人が地方に住む高齢者に何の用もないことなども強調しておきたい。

 それにしても、60代、70代になっても「トキメキ」に大金をはたいてしまうとは。

「恋心」は、いくつになっても消えないようである。

 それを思うと楽しみでもあり、それと同じくらい、やっかいでもある。

著者情報

作家、活動家

雨宮処凛

あまみや かりん

1975年、北海道生まれ。作家、活動家。反貧困ネットワーク世話人。バンギャル、右翼活動家を経て、2000年に自伝的エッセー『生き地獄天国』でデビュー。自身の経験から、若者の生きづらさについて著作を発表する傍ら、イラクや北朝鮮へ渡航を重ねる。その後、格差や貧困問題について取材、執筆、運動を続ける。『生きさせろ! 難民化する若者たち』でJCJ賞受賞。著書に『一億総貧困時代』『「女子」という呪い』など多数。

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