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連載

変革への闘い

「ラテンギャング・ストーリー」12 異なる選択肢

工藤律子(ジャーナリスト)

 2日後、メキシコに戻った私たちは、しばらくして、リクエストされた「サッカー・ホンジュラス代表の10番のユニフォーム」(安いコピー商品だが)を手に、アンドレス(18歳)に会いに出かけた。
 約2週間ぶりに会う少年に、インタビューの時と同じ施設の部屋でユニフォームを渡すと、「グラシアス(ありがとう)!」と、うれしそうにそれを体にあててみながら、「サン・ペドロ(スーラ)へ行ってきたんだぁ~」と、私たちの顔をしげしげと見つめた。
 そこでカメラのモニターを使って、撮影した彼の故郷、リベラ・エルナンデスの風景を見せる。すると、「そうそう、ここがスーパーで、この通りの向こうが僕の住んでいた地区で――」という具合に、かつての生活を思い出しながら、説明してくれた。私たちが訪ねることで彼や家族に何か危険が及ばないよう、彼の祖父母の家には行かなかったが、その周辺の風景だけでも十分に懐かしい様子だ。
 半年ほど前にできたばかりの「リベラ・エルナンデス公園」の写真をみせると、とたんに少年はひどく驚いて、こう叫んだ。
「ええっ! こ、これがあの公園!? うそみたいだ。僕が仲間といつもたむろっていた頃は、ほとんど崩れて、断片的にしか残っていないブロック塀があるだけで、何もなかったのに……」
 じっと写真に見入っている彼に、「ここにはいろんな遊具もあるのよ」と別の写真も見せると、ますます目を丸くした。
「公園の変わり様は、今日一番の衝撃だったよ!」
 帰り際、アンドレスは感慨深げに、その言葉を繰り返した。その様子はまるで、故郷に小さな希望を見い出したかのような、微笑ましいものだった。
 彼は今、サッカーで骨折した足も完治し、ホテルの仕事に復帰して、新しい人生をまっすぐに歩んでいる。年明け2016年には、施設を離れ、いよいよ自立生活に入る。

著者情報

ジャーナリスト

工藤律子

くどう りつこ

1963年大阪府生まれ。東京外国語大学地域研究研究科修士課程在籍中より、メキシコの貧困層の生活改善運動を研究するかたわら、フリーのジャーナリストとして取材活動を始める。著書に『仲間と誇りと夢と』(JULA出版局)、『ストリートチルドレン』(岩波ジュニア新書)、『マラス 暴力に支配される少年たち』(集英社、開高健ノンフィクション賞受賞)、『マフィア国家 メキシコ麻薬戦争を生き抜く人々』(岩波書店)、『ルポ 雇用なしで生きる スペイン発「もうひとつの生き方」への挑戦』(岩波書店)、『働くことの小さな革命 ルポ 日本の「社会的連帯経済」』(集英社新書)などがある。NGO「ストリートチルドレンを考える会」共同代表。

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