「社会的連帯経済」への誘い15「宝塚すみれ発電」 再生可能エネルギーで実現する持続可能なまちづくり
工藤律子(ジャーナリスト)
農作業後の環境学習タイム。再生可能エネルギーとソーラーシェアリング、そこに関わる市民の責任について語る井上さん。参加したのは、近畿大学の藤田香教授と学生たち、藤田教授の元同僚・龍谷大学の竹歳一紀教授、コープこうべの職員や組合員ボランティアらだ。(宝塚市立宝塚自然の家にて)撮影:篠田有史
昼食をはさんで、今度はコープこうべのスタッフの話が始まる。2021年で100周年を迎えたコープこうべの歴史の中で最初に扱った商品の一つを、参加者にクイズ形式で当ててもらう。その正解は「炭」、つまり「エネルギー」だ。
「生協は、設立当初から、地域のエネルギーを支えてきました。だから、子どもたちが大人になった時に安心して暮らせる持続可能な社会を創るには、再生可能エネルギーが大切だと考えたんです」
コープこうべ運営の「コープでんき」は、2017年から再生可能エネルギーの普及に取り組み、天然ガス発電7割、そのほかのFIT電気(太陽光発電のほか、国産木材チップを使ったバイオマス発電も含む)3割の電気を販売している。中でも、すみれ発電との連携が可能にした電気の地産地消と、ソーラーシェアリングによる「農業を守りながら発電というエネルギー産業を創る活動」は、持続可能な地域社会を創るための鍵となるものだ。
KOYOSI農園を含め、西谷地区ではすでに8カ所で、ソーラーシェアリングが導入されている。そのうちの二つは、ソーラーシェアリングの普及啓発を行う一般社団法人「西谷ソーラーシェアリング協会」のものだ。その協会の代表は、KOYOSI農園の地主の古家さんが務めている。
「ソーラーシェアリングをもっと増やしていくためには、土地を所有する農家の理解が必要です。古家さんのような地元の農家の方が事業の中心にいることは、とても大切なことなんです」
と、井上さんは言う。

西谷地区に暮らす農家で地主の古家さん。20数年前、西谷地区第一号の太陽光パネルを自宅の屋根に設置した。「最初はケンカばかりしてました」と笑う井上さんの良き同志だ。撮影:篠田有史
子どもたちに持続可能な未来を示す
KOYOSI農園で収穫されたサツマイモは、2006年から銀座のビルの屋上で養蜂を行い、サツマイモも作っているNPO法人「銀座ミツバチプロジェクト」との連携で、「宝塚芋人」という洒落たボトルの焼酎に変身する。井上さんが培うさまざまな連携が、異なる事業や地域をまたいだつながりをもたらしている。
井上さんが現在、最も力を入れるのは、「北摂里山地域循環共生圏」の構築だ。北摂里山地域循環共生圏とは、環境省が第5次環境基本計画(2018年4月17日閣議決定)で提示した地域循環型の社会を創る構想を、北摂(西谷、中谷、東谷の3地区)において具現化していく取り組み。そこで掲げられた目標の多くは、井上さんたちの活躍ですでに実現している。ソーラーシェアリングによる太陽光発電と農業の両立をはじめ、バイオマスの有効利用(「徳島地域エネルギー」と連携して、木質バイオマス利用を推進中)、食の地産地消、体験型学習プログラムの作成と実施などが、それだ(https://hokuces.jp/object/ 参照)。この計画全体の実現には、地域の行政、企業、協同組合、市民組織、一般市民がネットワークを築いて、参加する必要がある。
「反原発運動の際は、行政を目の敵にしていましたが、今はうまく付き合い、流れに入ってもらうことが大切だと感じています。県と話をし、宝塚市には再生可能エネルギーに特化した地域エネルギー課もできました。これからはまちづくり全体に取り組みたい」
井上さんはそう意気込み、持続可能なまちづくりのコーディネーターとして活躍する。「これからは地域循環共生圏を、本気で創っていきます。電気だけじゃなく、あらゆる面から目の前にある状況をどう(良い方向へ)変えていくのかを考え、住み続けたいと思うまちをつくる。そうして、常に『未来』があることを子どもたちに示すことが、大切だと思うんです。夢を語り続け、それを何年かかっても形にします」
非営利型(株)宝塚すみれ発電
事業開始 : 2013年5月
人数 : 取締役3人
事業内容 : 市民発電所の開設・管理・運営、再生可能エネルギーによる発電事業、再生可能エネルギーに関する企画、調査、コンサルティング事業、再生可能エネルギーに関する講演業務
モットー :再生可能エネルギーでまちづくり