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連載

私たちは「買われた」展を終えて想うこと(1)

"ここがおかしい"

仁藤夢乃(社会活動家)

 また参加メンバーの多くは、「買春者にこんなことをされた」と憎んだり責めたりする前に、「頼れるのも声をかけてくるのも、そういう人しかいなかった。そうするしかなかった」という。「買われる」に至るまでの背景には、善人による無関心や無理解があったことを知ってほしい、と話す子が多い。強制的に売らされたり、断れない状況で連れ込まれたり、ホームレス状態で売らざるを得なかった子もいる。貧困や虐待だけでなく、教育熱心な親の期待に応えることに疲れたり、いじめ、障がい、詐欺、病気がきっかけになった子もいる。
 その誰もが、「買われる」に至るまでに、保護者や教員、スクールカウンセラー、相談機関などの大人への相談、暴力や家出、自暴自棄な行動を繰り返す、うつになるなどさまざまな形でSOSを出していた。しかし、学校や児童福祉施設や医療機関や警察などで、適切な対応をされなかった。大人からのあきらめ、大人へのあきらめを感じながら、助けを求めることをやめ、自分が耐えることで生き延びようとした。そんな時、「どうしたの?」「一人?」「お腹すいてない?」と声をかけてきたのは買春者だったという。悪人による暴力以上に、善人の沈黙と無関心に苦しめられてきた、という声が上がった。
 買われるに至るまでの経緯や、買われた経験を通して、トラウマや苦しみを抱えて今も生きている一人ひとりが、もがきながら、それでも伝えようとしている。そこまでして伝えようとするのは、単に自分のことをわかってほしいというだけではない。
「今も同じように苦しんでいる子がいるはず」という想いと、声を上げられない子がいることを知っているからである。ないものにされていることを、知っているからである。「全部わかってもらえる、伝わるなんて思ってない」と、あきらめも感じながら、自分たちが伝えることで何か感じてくれる人や、真剣に考えようとしてくれる人がいるかもしれないと、希望を持とうとしている。
 さまざまな理由から、準備していた作品を展示できなくなった子もいた。そうしたメンバーの想いもしっかりと受け止め、例えば『大人に言われた嫌な言葉』のパネル作品では、遠方にいたり、自分が言われた言葉が辛くて書けないという子については代筆などもしてあげた。私は、こうした企画展メンバーの優しさと強さ、思いやりにも触れてもらえたらと思った。

私たちは『買われた』展を終えて想うこと(2)へ続く。

著者情報

社会活動家

仁藤夢乃

にとう ゆめの

1989年生まれ。中高時代に街をさまよう生活を送った経験から、10代女性を支える活動を行っている。これまでに夜の街でのアウトリーチ、シェルターでの保護や宿泊支援、シェアハウスでの住まいの提供といった活動を展開。第30期東京都「青少年問題協議会」委員。厚生労働省「困難な問題を抱える女性への支援のあり方に関する検討会」構成員を務めた。TBS「サンデーモーニング」にコメンテーターとして出演中。著書に『難民高校生』(英治出版)、『女子高生の裏社会』(光文社新書)。

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