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連載

第24回 川崎哲「戦場のリアル」

「ロボット戦争」の時代

川崎哲(ピースボート共同代表)

(構成・文/加藤直樹)

「例えば、腕を振り上げて跳躍運動をしている人を自動的に『キャンプで訓練に励むテロリスト』と判断するようプログラムされているということもあります。そのため、村人が腕を振り上げているだけで攻撃されてしまう」

 14年、国連の人権理事会で「人権とテロに関する特別報告者」であるベン・エマーソンが無人機に関する報告書を発表。無人機を使用する各国に情報公開と専門家による実態調査を求めた。しかしアメリカは、誤爆被害の実態を明らかにしていない。川崎さんによれば、無人機による攻撃の多くは軍ではなくCIA(中央情報部)による諜報活動に属しており、軍の作戦以上にその全貌は隠されているのだという。

 

戦争のAI化とどう向き合うか

「人間が100%関与しない自律的な殺人ロボットの登場を待たずとも、戦争のIT 化による人道問題はすでに深刻化しているということです。そもそも、『人間の関与』について、人為的な判断が 存在するかしないかという二分法で判断できるのでしょうか。関与と言っても形式的なものにすぎない場合もあります。人間の関与の有無を100%か否かで見るのではなく、関与の度合いという一定の幅で、いわばグラデーションとして見る必要があると思います」

  例えば、ネットで何らかの契約や登録をする際を考えてみればいい。小さな字でびっしり書かれた契約書が示され、最後に「同意しますか」と聞いてくる。

「同意するしかないですよね。こういうとき、『100%自分で決定している』と言えるのでしょうか」

 行動選択のための判断材料となる情報についても同じだ。検索エンジンサービスが、私たちの検索記録などの情報を分析して「あなたはこういう商品がお好みでしょう」と尋ねてくる。たいてい当たっている。私たちは、決定の前提となる情報の選択を、すでにITに委ねているわけだ。この場合、私は「100%自分で決定した」と言えるのだろうか。

 戦争 についても同じだと川崎さんは言う。人間が関与する度合いが、IT化が進むに従って極小化していくということだ。

「人間の関与が100%存在しない殺人ロボットを規制することはもちろん必要です。しかし、それだけでは不十分です。『同意します』ボタンのように、『人間の関与』を形式的に残しながら実情としては完全自律、という兵器が登場するだけではないでしょうか 。戦争や人殺しについての判断を情報技術や人工知能に委ねてしまう事態を実際に規制するには、ITやロボットの開発過程でのガイドラインをつくり出すことが必要だと思います」

 川崎さんは今後、殺人ロボットを頂点とするロボット兵器、無人機の問題について、幅広い、そして深い議論を呼びかけていきたいと考えている。

「この問題は、反戦平和運動の枠では捉えきれないテーマをはらんでいます。オバマ政権について指摘したように、『これ以上、兵士が死なないように』という、一面では人道的な発想がロボット化を推進している現実がある。一方でITやロボット関連業界でも、このままではマズい、何らかの規制が必要だ、と考えている人がいるはずです。右翼か左翼かといった次元ではくくれない。戦争のIT化、AI化とどう向き合うか。各方面の専門家の知恵を集めながら、幅広く、また掘り下げた議論をつくっていきたい。とくに、新しい技術を担っていく若い世代にこそ、よく考えてほしいと思います」

著者情報

ピースボート共同代表

川崎哲

かわさき あきら

1968年生まれ。東京大学法学部卒業後、NPOピースデポ事務局長などを経て現職。2017年にノーベル平和賞を受賞した核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)国際運営委員を務める。著書に『新版 核兵器を禁止する』(岩波ブックレット、2018年)、『核拡散』(岩波新書、03年)。共著に『殺人ロボットがやってくる?!』(合同出版、18年)、『イマジン9-想像してごらん、戦争のない世界を』(合同出版、07年)などがある。

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