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連載

第2回 吉川美代子さん(フリーアナウンサー)

気がつけば22歳。また1カ月生きてくれてありがとう

吉川美代子(フリーアナウンサー)

加藤由子(動物ライター)

加藤 20年くらい前から「ペットは家族の一員」と言われ始めましたが、私、いつも腹が立つのは災害の際の避難のときです。ペットは家族の一員です、終生飼育しましょうと言っているのは役所なのに、避難所には連れてこないでくださいと言われることがまだあります。
吉川 そうですね。人間が避難しなければいけない状況なのですから、ペットだって同じですよね。万が一、首都直下型地震が起こったらゲンと一緒に乗り越えるために、猫砂やキャットフードを10袋くらい備蓄しています。
加藤 それは大切ですね。建物さえ倒れなければ、猫砂と猫缶をストックしておけば何とかなります。日本人はお上が何とかしてくれるという発想が強いけど、自分でできることはやるべきだと私は思います。
吉川 自己責任で一人ひとりがもっと自覚しなければいけないですよね。
加藤 災害に限らず、自分の半径1メートルのことしか考えていない人が多いんじゃないかと最近つくづく思います。そのくせ、何かが起こると一斉に大騒ぎするでしょ。
吉川 そうですね。私は30年近く報道の仕事に携わってきましたが、全て裏を取って原典に当たることをずっとやってきましたから、何事もメディアや世間の言うことを鵜呑みにするのではなく、自分でイエスかノーかを決めなければならないと思っています。なので、騒動になってから周りの意見に煽られて、さらに大騒ぎになる風潮には私も違和感を覚えます。
加藤 同感です。テレビを見ていても、当たり障りのないことを言うコメンテーターにもイライラするんですよ。
吉川 私もコメンテーターを務めていますが、視聴者代表のような立ち位置でコメントしてくれたら安心というのが番組の作り手側にはあるようです。でも視聴者はそんなこと言われなくてもわかっているって思っているからイライラが募る。その結果、テレビ離れが進んでいるのかもしれません。
加藤 そう思います。視聴者は難しいことを言っても見ないからと、ニュース番組の中で、グルメ情報ばかりやっているのかもしれないけど、これも何か馬鹿にされていると感じてしまうんです。
吉川 チャンネル数もたくさんあるので、似たような番組がどうしても増えてしまいます。あそこがやって視聴率が取れていたから、うちもやろうかというところがあって、同じような方向に流れていきがちなのです。
加藤 いろいろな番組で取り上げられていると、見ている側は巷(ちまた)で話題になっていると思ってしまうのですが、必ずしもそうではなくて、メディア側の「右に倣え」で意識操作をされているってことですね……、ってだんだん猫の話からそれてきちゃった(笑)。戻しましょう。
吉川 今、あちらこちらで猫の話題が取り上げられていますよね。ついこの間までは、ワンワン言っていたのに、今はどこもかしこもニャンニャンです。一時期、犬はハスキーだらけになり、「101匹わんちゃん」の映画でダルメシアンだらけになり……。
加藤 その後、チワワだらけ、ミニチュアダックスだらけ。
吉川 今はトイ・プードルが多いですよね。知り合いのカナダのペットフードメーカーの方が日本に来たとき、散歩している犬種があまりにも限られていて驚いたと言っていました。
加藤 結局、猫ブームと言われているのだって、一つ何かが話題になったことで同じ方向に流れているだけですよね。猫は猫、ずっと変わりないのに、勝手にもてはやされていい迷惑です。
吉川 ブームでかわいいからと、猫のことを知らない人が飼うんですよね。私の知り合いも、猫を一度も飼ったことがないのに、ある日突然、両親がキャットショーのチャンピオンだという長毛種を飼い始めました。でも、猫トイレの掃除の仕方も知らなくて砂全体がカチカチに固まっていたし、ブラッシングすら自分でできなくて毛玉だらけ。もうこれは虐待だと思い、私も手を貸しましたし、獣医さんも紹介しました。先生が言うには、「運転免許取りたての人がいきなりランボルギーニに手を出したようなもの」だって。きちんと知識と覚悟を持って猫と暮らしてほしいと思います。

猫を亡くすことで飼い主が不幸になってはいけない

加藤 今日ぜひお聞きしたかったのは、高齢猫と暮らす心構えです。そろそろ別れのときを意識されているのではないでしょうか。
吉川 そうですね。日々ガリガリになっていくし、毛もボソボソになってきて、お迎えは近いのかなと思います。ゲンひとりのときに何かあったら心配なので、1泊の出張でも必ず動物病院に預けていくことにしています。
加藤 最期は病院に連れていくか、自宅で看取るかの選択もあります。ペットにも今、延命治療がありますから、高度医療を受けないと納得できない人も多い。でも、飼い主が判断するしかないんです。吉川さんは多分、もう逝ってしまうという瞬間もわかる人なんだと思います。
吉川 痛みや苦しみがなく、私に撫でられながら安らかに逝ってほしいと思います。その犬や猫の持つ寿命もありますよね。
加藤 今、犬も猫も動物の生理的に最大限の寿命まで生き始めているのだと思うんです。人間の生理的寿命が120歳と言われていますが、猫では20数年だと思います。
吉川 だから覚悟はしています。今までもやれることは精いっぱいやってきたので後悔もありません。でも、私は一人っ子で、両親はすでに亡くなっていますので、家族と言えるのがゲンしかいません。ゲンがいなくなったら、その孤独に耐えられるかどうかが心配です。亡くなったときには、きちんとお別れをしてお骨にしてもらって、その先どうしようかと考えているところです。
加藤 今、ペットも一緒に入れるお墓もありますよね。
吉川 私、吉川家の墓を守っているのですが、そのお寺のお墓は、猫はだめなんです。
加藤 猫のこともそうですが、失礼ですが吉川家のお墓はどうするんですか?
吉川 そうなんです。私がいなくなったら守る人がいなくなってしまうので、結局、墓じまいをしなければいけないんです。そうすると、私のお骨をどうするかという問題もあり、これもきちんと考えないといけません。
加藤 私はすでにペットも一緒に入れて永代供養してもらえる樹木葬に申し込んでいるんです。伊豆大島なんですが、富士山も見えていいですよ。
吉川 それいいですね! 私もそうしようかしら。でも今はとにかく、ゲンを看取るためにも私が健康でいなければと思っています。
加藤 吉川さんは後悔もないし、覚悟もあるから大丈夫だと思いますが、私がいつもお話しするのは、猫と暮らしたことは幸せだったのだから、猫が死んでしまったことで飼い主が不幸になってはいけないということです。飼い主が不幸だと思ってしまったら、その猫は浮かばれません。猫を看取ってこそ飼い主の責任を果たせる。腕の中で看取れるのは幸せなことだと私は思うのです。そのためには、必ず別れのときが来るという心の準備が大切です。
吉川 本当にそうですね。ゲンを残して自分が先に逝くのは絶対に嫌です。ゲンは人間の年齢に換算すると軽く100歳を突破しています。また1日、1カ月生きてくれてありがとうと感謝しています。


◆一筆御礼 ~対談を終えて
洗練された話し方が心地いい、すてきな大人の女性とのおしゃべりは、とても楽しい時間でした。なんてクールでスマートな女性なのだろうと思っていたら、だんだんとゲンちゃん談義に熱が入り、「ゲンが若かった頃の写真があるの」と捜し始め、なかなか見つからなくても「何が何でも見せたい」の雰囲気で捜し続け、やっと見つかって「見て~」と言ったときに、「あ~、猫好きって皆、フニャフニャ度は同じなのね」と妙に感心してしまいました。ゲンちゃん、吉川さんといつまでもお幸せに!

撮影:橋詰かずえ

著者情報

フリーアナウンサー

吉川美代子

よしかわ みよこ

1954年生まれ。77年TBSに入社。以後37年間、アナウンサー、キャスターとして活躍。TBSアナウンススクールの校長も12年間務めた。2014年に定年退職。現在はキャスターだけでなく、コメンテーターとしても幅広いジャンルで活躍している。著書に『ラッコのいる海』(立風書房)、『アナウンサーが教える 愛される話し方』(朝日新書)、『結婚式・二次会 女性のスピーチ』(日本文芸社)ほか。(2015.12)

動物ライター

加藤由子

かとう よしこ

動物ライター、エッセイスト。「ヒトと動物の関係学会」監事。1949年生まれ。日本女子大学卒。大学では生物学(動物行動学)を専攻。移動動物園などを経てフリーライターになる。動物、特にネコの生態や行動学に精通し、ネコに関する書籍などを多数執筆している。ネコ関連の著書に、『雨の日のネコはとことん眠い』『ぬき足、さし足、にゃんこ足』(共にPHP研究所)、『ネコを長生きさせる50の秘訣』(サイエンス・アイ新書)、『猫の気持ちを聞いてごらん』(幻冬舎文庫)、『猫式生活のすゝめ』(誠文堂新光社)、『猫とさいごの日まで幸せにくらす本』(大泉書店)、『猫の気持ちは見た目で9割わかる!』(大和書房)ほか多数。

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