第8回 赤星たみこさん(漫画家)
加藤 ところで、今日はぜひ聞いて帰りたいことがあるんです。赤星さんといえば、石けんの達人としても知られていますが、猫の身の回りの物を洗う時のおすすめってありますか? たとえば、猫ってよく吐きますよね。猫がカーペットや床に吐いた時には何で拭くのがいいですか?
赤星 私はきちんと汚れを拭き取ってから、セスキ炭酸ソーダをスプレーして使っています。
加藤 ニオイも取れますか?
赤星 セスキはアルカリ性で、吐いた物には胃酸が含まれていますし、つんとしたニオイのするウンチなんかも酸性ですから、拭き取った後にセスキをかければ中和されてニオイが取れます。粗相(そそう)をした時は、オシッコのアンモニア臭、あれはアルカリ性なのでクエン酸を使うといいですよ。汚れを落とすだけならば水で洗い流せばいいんですが、ふんわり漂っているニオイを取るには、酸性のニオイの物にはアルカリ性のセスキ、アルカリ性のニオイの物にはクエン酸などの酸性をスプレーすればいいんです。
加藤 なるほど! それじゃあ、猫のトイレ容器を洗う時には?
赤星 トイレを洗うなら、石けんなど界面活性剤を使った方がきれいになります。
加藤 界面活性剤って合成のものですか?
赤星 皆さんそういうイメージなんだけど、界面活性剤って要は水と油という性質が違う物を混ぜ合わせるものなんです。たとえばマヨネーズ。酢と油は本来混ざらないものですが、卵黄が界面活性剤の働きをするから、混ざり合うことができる。界面活性剤でも天然の物はあるんですよ。
加藤 うちの猫は私のベッドで粗相をするんです。枕にニオイが染み込んでしまい、漂白すればニオイが取れると思ってしょっちゅう漂白したんですが、それでも繰り返しオシッコをしてしまうので、枕を捨てました。あれはニオイが取れていなかったのかもしれないですね。
赤星 そうかもしれないですね。合成洗剤は弱アルカリから弱酸性までいろいろな種類があるんですが、物に染み込む力が長く続くという厄介な性質もある。つまりニオイごと染み込んでしまい、逆にニオイが残ってしまうこともあります。猫の毛布とかベッドなど、布製品を洗う時は石けんがいいですよ。よく泡を立てて洗うと、ニオイもすっきり取れます。
加藤 赤星さんの本を読みましたが、泡を立てることが大事なんだそうですね。
赤星 そうです。固形石けんでも粉石けんでもいいのですが、泡を立てるっていうのは、洗剤をよく溶かすということです。液体の洗剤は、水に溶けているようでちゃんと混ざっていないことが多い。洗濯機は最初に水と洗剤だけで10分くらい回してよく溶かしてから洗濯物を入れると、汚れもニオイもすっきり取れます。
加藤 なるほど、とにかくよく溶かして泡立ててみます。私たちが嗅いでニオイを感じるくらいなら、猫はもっと感じてるということですからね。
赤星 そうですよね。ニオイや汚れをしっかり落としたいなら、石けんは無添加ではなく、炭酸塩が配合されているものを選んでください。炭酸塩というのはアルカリ剤で、汚れはほとんどが酸性だから、アルカリ性の状態をキープしたほうがよく落ちます。
加藤 私は漂白剤なら何でも落としてくれるんじゃないかと思って、がんがん使ってました。あまり意味がなかったんですね。
赤星 ぜひ石けんをよく溶かして試してみてください。
加藤 はい! 心を入れ替えてやってみます。ありがとうございました。
◆一筆御礼 ~対談を終えて
赤星家の猫たちは、「そこに住んで暮らしている」のだという実感がありました。見事に「赤星家の子どもたち」で、猫らしい猫たちなのに、どこか猫っぽくない雰囲気があったからです。漫画家の自由な発想と猫の自由気ままさは、とても相性がいいのでしょう。その相性の中で、赤星家の猫たちは魅力的な進化をしているのかもしれません。
赤星さんと会った翌日から私は、洗濯方法を変えました。まず洗剤と水だけで洗濯機を10分回し、その後、洗濯物を入れました。乾いた洗濯物のニオイが、これまでと全く違うことに驚きました。ポイントは泡なのだと実感です。だから洗顔も泡で勝負することにしました。十分に泡立てて、そっとなでるように時間をかけて洗いました。しっとりです。赤星さんのお蔭で、私も少し進化し始めています。感謝!
撮影:橋詰かずえ