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連載

第17回 内藤剛志さん(俳優)

猫との暮らしで必要なのは「想像力」と「民主主義」。相手を思いやり、何を考えているのかを考えるのが楽しい。

内藤剛志(俳優)

加藤由子(動物ライター)

内藤 生きものと暮らすのって非常に面倒くさいことですよね。当然のことながら排泄など汚い部分もあるし、家具もボロボロになるし、死んじゃうし。そんなふうに不自由なことそのものが、生きものと一緒に暮らすということだと思うんです。人間の世の中だって、いろんな人がいて、自分と違う人も認め合いながら生きていかなくちゃいけない。その一番小さな単位が、今はあえて「ペット」という言葉を使いますが、ペットを飼うことだと思うんです。大げさに言えば、これって民主主義の基本じゃないでしょうかね。いろいろな考えを受け止めて考えるのが民主主義の原型だと思います。
加藤 なるほど。民主主義って表現、いいですね。
内藤 死も含めていろんなことを引き受けること。不自由で面倒くさいことも多いけど、その代わりに与えてくれるものもとっても大きい。
加藤 人間の子どもも手がかかると言いますが、ヒトという同じ種ですもんね。
内藤 犬や猫は人間とは種が違うのでもっとわからないですよね。人間だったら赤ちゃんのうちは言葉が通じなくてもいずれ話ができるようになる。でも、犬や猫は一生言葉では通じ合えないから、「想像力」で暮らすわけです。彼らが何を考えているかを考えることが楽しい。それを考えないと犬や猫にとってかわいそうなことになりませんか? 寒くないかとか暑くないかとか、おなかすいていないかとか、つねに相手の立場に立つことが重要だと僕は思うんです。
加藤 確かに想像力は大切ですね。ご自宅では猫はどんなふうに過ごしているんですか?
内藤 うちの猫たちは、もう勝手気ままに生きています。家の中はすべてOKで、立ち入り禁止エリアもありません。自由に過ごせるようにしています。
加藤 テーブルの上に乗ってももちろんOKですね?
内藤 はい。テーブルの上に乗ろうがベッドの中に入ろうが自由です。だから、食べ物の中に猫の毛とか入っててもまったく気にならないですね。だって、猫がいれば入っちゃうでしょ(笑)。決めたことと言えば、トイレの場所くらいですかね。猫たちにとって危ないこと、たとえば、お風呂場のドアを開けておくと、猫が水の入っている浴槽に落ちたら危ないから閉めておくとか、人間側が注意することはあるけれど、彼らがやろうとしていることについて禁止事項はないです。
加藤 リスクを回避する気遣い、想像力がちゃんと働いていますね。
内藤 かといって彼らのことをすごく優遇しているわけでもないですよ。僕が座りたいところに猫がいたら、「どけ」って言います(笑)。座りたいけれど猫がいるからどけられないという人の気持ちもわかりますが、僕は序列はないと思っているんで。
加藤 同じところに同等に一緒にいるっていうのがいいんですよね。
内藤 いろいろな関わり方があっていいと思います。僕は淡々と猫と一緒に暮らしています。
加藤 そこに楽しさを見いだしているということですね。おっしゃっていること、よくわかります。最後に、このコーナーの締めとして皆さんに聞いているのですが、内藤さんにとって猫って何ですか?
内藤 ひと言で? うーん何でしょうか? 仲間という言葉では軽いし、やっぱり一緒に生きていくものだと思います。友達でも後輩でも先輩でもないし、かといって僕に言わせれば家族というのともちょっと違う。異種だけど一緒に生きていくもの。それに尽きますね。
加藤 ありがとうございました。

◆一筆御礼 ~対談を終えて
「犬や猫と暮らすことは民主主義の基本」という内藤さんの言葉は、名言でした。種の違う生きもの同士が、たまたま出会い、同じ時を共有する。その中でお互いに何かを理解し合い、いずれ別れが訪れてもまた出会いがあり、そのつき合いは脈々と続いていく。一見相容れないもの同士が同じ時を共有するために何をするか、そこに民主主義の原点があるということですよね? 「生きもの全体として捉えたときに、自分ちの猫はたまたま今、一緒に暮らしている存在」だという捉え方には私もまったく同感でしたが、それを民主主義と結びつけて考えたことはありませんでした。「大岩純一捜査一課長、ベリーグッドです」と思わずつぶやいてしまいました。このセリフの意味がわからない人は、ぜひ『警視庁・捜査一課長』をご覧あれ。

撮影:上山忍
*の写真は内藤剛志さん提供

著者情報

俳優

内藤剛志

ないとう たかし

1955年大阪府生まれ。文学座研究所を経て、1980年に映画『ヒポクラテスたち』でデビュー。その後、テレビドラマ、映画、司会、バラエティーと幅広く活躍。現在、情報番組『スタイルプラス』(東海テレビ、日曜12時~)でメインMCを務める。主演の木曜ミステリー『警視庁・捜査一課長』(テレビ朝日系、木曜20時~)が放映中。
(2017.04)

動物ライター

加藤由子

かとう よしこ

動物ライター、エッセイスト。「ヒトと動物の関係学会」監事。1949年生まれ。日本女子大学卒。大学では生物学(動物行動学)を専攻。移動動物園などを経てフリーライターになる。動物、特にネコの生態や行動学に精通し、ネコに関する書籍などを多数執筆している。ネコ関連の著書に、『雨の日のネコはとことん眠い』『ぬき足、さし足、にゃんこ足』(共にPHP研究所)、『ネコを長生きさせる50の秘訣』(サイエンス・アイ新書)、『猫の気持ちを聞いてごらん』(幻冬舎文庫)、『猫式生活のすゝめ』(誠文堂新光社)、『猫とさいごの日まで幸せにくらす本』(大泉書店)、『猫の気持ちは見た目で9割わかる!』(大和書房)ほか多数。

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