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連載

萌木の国の大イベント 〜雑木林の大伐採

第80回

今森光彦(写真家/切り絵作家)

 今年は暖冬で穏やかな天候の日が多いように感じます。琵琶湖の水位も低くなっていますので、全体に雨量も少ないのかもしれません。
 30年以上前は、湖北地方は大雪に見舞われ、私がよく訪れる高島市マキノ町では、3月下旬になるまで地面が見えないほど雪が積もりました。雪が多く積もらないと冬でも木々の整理ができて助かるのですが、四季の変化が乏しいのは寂しい気持ちになります。
 そんなマキノ町にある「萌木の国」で、今回、大伐採を行いました。大伐採というのは、太くなった幹を根元から一斉に切り倒す作業のことです。萌木の国の雑木林は約2ヘクタールあるので、それをすべて伐採すると平原のようになります。

雪が降り積もった、伐採前の萌木の国。(撮影:今森元希)

 この大掛かりなイベントは、萌芽(ほうが)したクヌギやコナラなどの幹が太ももくらいに成長したのを見計らって、十数年ごとに行います。伐採の目的は、切り出した木をシイタケのほだ木や薪に使うためです。萌木の国を管理してから30年以上になりますが、私はこの大伐採をこれまでにも二度経験しています。
 この界隈では雑木林を1〜2ヘクタール単位の広さで伐採するので、空から見るとまるで雑木林の四角いブロックが並んでいるかのようです。
 とにかく規模が大きいので私個人では難しく、プロの手を借りることになります。シイタケや薪を生業にしている人に地上の木の部分を買ってもらい、運んでいただくやり方をしています。

大伐採した後の萌木の国の様子。(撮影:今森元希)

 伐採の翌春は地面に光が降り注ぎ、いろいろな草が生えてきます。雑木林の中ではこれまであまり見かけなかったススキやスゲの仲間は、暗い林床が明るくなるのを待って生えてくる植物たちです。一方で、ぱったりと姿を消してしまう植物もあります。カタクリやオウレンなど、早春に花を咲かせるスプリング・エフェメラルたちは、平原が再び森のようになるのを待つのです。
 今年の春は、草の背丈が高くなるのを覚悟せねばなりません。そして、初夏と秋に草刈りをする必要があり、また仲間たちと作業の計画を立てねばなりません。
 草に覆われた明るい雑木林では、生き物の顔ぶれも変わります。野ウサギが多くなり、シカも頻繁に現れます。昆虫では、バッタやキリギリスの仲間が大変多くなります。広々とした空間を、オニヤンマがパトロールのコースとして使ったりもします。
 雑木林は木々の成長によって、違う生き物たちと出合う楽しみがあります。この変化が雑木林の一番の魅力だと思っています。

萌木の国にあるクヌギの古木、通称「やまおやじ」。(撮影:今森元希)

「やまおやじ」も伐採し、再び成長するのを待つ。(撮影:今森元希)

*写真の複製・転載を禁じます。

著者情報

写真家/切り絵作家

今森光彦

いまもり みつひこ

1954年滋賀県生まれ。幼い頃から昆虫少年で、大学卒業後に独学で写真を学び、1980年よりフリーランスとなる。以後、琵琶湖をとりまくすべての自然と人びとのかかわりをテーマに撮影している。また、熱帯雨林から砂漠まで昆虫写真を追求し、広く世界の辺境の地まで取材し続けている。木村伊兵衛写真賞(1995年)、土門拳賞(2009年)などを受賞。NHKスペシャルで「里山」をテーマにした番組を多数放映、現在もNHKBSプレミアムにて「オーレリアンの庭 今森光彦の四季を楽しむ里山暮らし」を不定期放映中。主な書籍に、『昆虫記』(福音館書店、1988年)、『里山物語』(新潮社、1995年)、『NHK ニッポンの里山』(NHK出版、2014年)、『今森光彦の心地いい里山暮らし12か月』(世界文化社、2015年)ほか多数。

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