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連載

春に舞う白い蝶 〜モンシロチョウ

第94回

今森光彦(写真家/切り絵作家)

 暖かくなってきて、山は日に日に新緑に包まれてゆきます。田んぼは水が張られているところが多くなり、いよいよ一足早い田植えが始まります。
 早春の頃には腰の高さくらいの背丈だった菜の花は、顔のあたりまで成長しました。花が集まって、黄色いベルトをつくったり、カーペットのように広がったりしています。お花畑の中に入ると甘い香りがします。この匂いを嗅いでいると体じゅうに春が浸透します。

春たけなわの里山は、甘い香りでいっぱいだ。(撮影:今森元希)

 花の周りにはミツバチがブンブン羽音をならして飛び回っていますが、白い蝶もたくさん舞っています。里山で一番身近な蝶のひとつ、モンシロチョウです。
 モンシロチョウは、名前のとおり白地の翅(はね)に黒い紋様をもっています。メスはこの黒紋が大きいので、オスに比べるとやや黒っぽく感じます。早春から秋まで見られ、私のアトリエがある琵琶湖の西側では年に4回ほど世代交代を繰り返しているようです。ただし、卵、幼虫、蛹、成虫というライフサイクルは、天候や母蝶が産卵する時期などによってずれてくるので、結果的にいつでも出会える蝶ということになります。

ブロッコリーの花にやって来たモンシロチョウ。(撮影:今森元希)

 ところで、白い蝶が飛んでいたらモンシロチョウだと思っている人が多いと思いますが、実際には、いろんな種類の蝶が混じってします。標高の低い里山では、ツマキチョウとスジグロシロチョウがモンシロチョウと一緒に飛んでいます。ツマキチョウの方は、一回り小型なのと、飛び方が直線的なので区別できますが、注意して見ていないとわかりません。ツマキチョウのオスは、前翅の先端に小さな黄紋をもっており、慣れてくると、飛翔中にそれが確認できるようになります。まあ、これができたら、かなりマニアックな人だと言えますが……。

春だけに見られるツマキチョウはとても美しい蝶(写真はオス)。(撮影:今森元希)

 ツマキチョウは春にしか登場しないのでいいのですが、モンシロチョウと見分けがつきにくいのは、スジグロシロチョウの方です。姿も飛び方もよく似ていて、春から秋まで見られます。本来は、モンシロチョウよりやや木々の茂った環境を好むのですが、畑や公園などにもいます。むしろ、スジグロシロチョウの方が、場所を問わず見られるような気がします。いずれにしても、種類を知りたければ、吸蜜などで翅を休めている時を狙うしかありません。
 そのほか、山間に行くとエゾスジグロシロチョウがいますし、湖北地方にはウスバシロチョウもいます。この蝶は「シロチョウ」という名前ですが、アゲハチョウの仲間なのです。ウスバシロチョウも、モンシロチョウやスジグロシロチョウと一緒に飛んでいるのでややこしいです。
 白い蝶を見かけたら、注意して観察してみてください。

ラディッシュの白い花もこの時期に咲く。(撮影:今森元希)

*写真の複製・転載を禁じます。

著者情報

写真家/切り絵作家

今森光彦

いまもり みつひこ

1954年滋賀県生まれ。幼い頃から昆虫少年で、大学卒業後に独学で写真を学び、1980年よりフリーランスとなる。以後、琵琶湖をとりまくすべての自然と人びとのかかわりをテーマに撮影している。また、熱帯雨林から砂漠まで昆虫写真を追求し、広く世界の辺境の地まで取材し続けている。木村伊兵衛写真賞(1995年)、土門拳賞(2009年)などを受賞。NHKスペシャルで「里山」をテーマにした番組を多数放映、現在もNHKBSプレミアムにて「オーレリアンの庭 今森光彦の四季を楽しむ里山暮らし」を不定期放映中。主な書籍に、『昆虫記』(福音館書店、1988年)、『里山物語』(新潮社、1995年)、『NHK ニッポンの里山』(NHK出版、2014年)、『今森光彦の心地いい里山暮らし12か月』(世界文化社、2015年)ほか多数。

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