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連載

気持ちが晴れ晴れとする風景 〜メタセコイア並木

第103回

今森光彦(写真家/切り絵作家)

 冬になると北の空を眺めることが多くなります。北の方から灰色の雪雲が比良山地(ひらさんち)を覆うように迫ってきたら、琵琶湖の北の高島市あたりは天気が荒れています。
 私が写真を撮り始めて間もない頃は、冬季における湖北と湖南の気候の違いが顕著で、南部の大津界隈は晴れていても、北部は積雪にみまわれる、ということがよくありました。たびたびお話をしている「萌木(もえぎ)の国」は高島市マキノ町にあり、1メートル以上の降雪が珍しくない豪雪地域だったのです。萌木の国のやや琵琶湖側に、雑木林地帯を割るように一直線の道があります。道の両脇は見事なメタセコイア並木で、強い冬の風雪に耐える防風林として設けられました。長さ2.4キロメートル、約500本のメタセコイアが並んでいるので壮観です。

晴れた日のメタセコイア並木。背後の山は、野坂山地。(撮影:今森元希)

 この整備が行われたのは1981年で、私がプロの写真家になってから2年目のことです。私がマキノ町に通い出した当時は、高さ数メートルくらいのひょろ長い木が植えられていた記憶があります。冬は、除雪された雪の壁に埋もれて見えなくなっていました。それが、10年くらい経つと、急に背丈が高くなり存在感がでてきたのを覚えています。
 その後、この並木は、1994年に「新・日本街路樹100景」に選ばれ、2010年には「日本紅葉の名所100選」にもなっています。秋から冬にかけては、レンガ色に紅葉した葉がきれいですし、新緑の眩しさは日本のようには思えません。韓国ドラマ「冬のソナタ」に登場する場面と酷似していることから、一気に有名になりました。
 今は、その稀有な風景に出会うために日本中から観光客が訪れるようになっています。一昔前の静かなマキノ町のことを知っている者にとっては、想像できない光景です。

雪が降っている時のメタセコイア並木。(撮影:今森元希)

 私は、この並木が注目され始めた頃、撮影のために頻繁にマキノ町を訪れていました。その時、メタセコイア並木の周辺に広がる栗園の組合長と親しくなり、栗の害虫であるカミキリムシの話や雑木林の管理についていろいろと教えていただきました。この組合長から聞いた話ですと、この真っ直ぐな道は、地元では飛行機の滑走路のためにつくったとも言われているそうです。そして、道沿いに木を植えるにあたっては、北海道のポプラ並木を視察するなどして、いろいろな樹種を検討した結果、メタセコイアになったと話していました。
 ただ、よいことばかりではなく、木が成長するにつれて、並木周辺にある栗畑の日当たりが悪くなるなどのマイナス面も出てきたほか、木々の維持や管理、外来者のことなど、地元の人たちにはいろいろとご苦労があるようです。
 今年も寒波がやってきて、メタセコイアの並木道が白くなりました。萌木の国を訪れる時には必ず見る光景ですが、気持ちが晴れ晴れとします。

メタセコイア並木は、横から見ても美しい。(撮影:今森元希)

冬にメタセコイア並木を訪れる時は長靴姿だ。(撮影:今森元希)

*写真の複製・転載を禁じます。

著者情報

写真家/切り絵作家

今森光彦

いまもり みつひこ

1954年滋賀県生まれ。幼い頃から昆虫少年で、大学卒業後に独学で写真を学び、1980年よりフリーランスとなる。以後、琵琶湖をとりまくすべての自然と人びとのかかわりをテーマに撮影している。また、熱帯雨林から砂漠まで昆虫写真を追求し、広く世界の辺境の地まで取材し続けている。木村伊兵衛写真賞(1995年)、土門拳賞(2009年)などを受賞。NHKスペシャルで「里山」をテーマにした番組を多数放映、現在もNHKBSプレミアムにて「オーレリアンの庭 今森光彦の四季を楽しむ里山暮らし」を不定期放映中。主な書籍に、『昆虫記』(福音館書店、1988年)、『里山物語』(新潮社、1995年)、『NHK ニッポンの里山』(NHK出版、2014年)、『今森光彦の心地いい里山暮らし12か月』(世界文化社、2015年)ほか多数。

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