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連載

世界最大の格ゲー大会「EVO」8回目の夏

第13回

百地裕子(プロゲーマー)

 一人は日本から現地観戦に来たという人で、なんとイミダスの私の連載記事のコピーを手に応援に駆けつけてくれました。私の「できないくせに完璧主義」について書いた、第10回「暴走型完璧主義ゲーマーの憂鬱」のエッセーに大変共感したとの感想を話してくださり、「応援しています!」と、試合中の私を見守ってくれました。同じく日本から観戦しに来たという別の人もわざわざ声を掛けてくださり、最後までずっと試合を見守ってくれていました。

 さらにですね、アメリカ人の若い女の子が私に駆け寄ってきて目をウルウルさせ、緊張で声を震わせながらも興奮したテンションで「チョコ、あなたに会えて本当に嬉しい。本当に本当に嬉しい。大好き!」そう言ってくれたんですよね。彼女の名前はSabrinaちゃん。1時間半ほどの試合中、ずっと後ろで応援してくれて、私なんぞの戦いを何試合も嬉しそうに観戦していました。

 敗退が決まった後は、私の気持ちの整理がついたのを見計らったかのようなタイミングで駆け寄ってきて「チョコ! 今、あなたのレプリカユニフォームを買ってきたの! あなたのブランカはとてもかっこよかった! 本当にありがとう!」

 そう言って、手には「CHOCOBLANKA #1 FAN」と背中に書かれたユニフォームのレプリカとブランカの人形が……。もうね、信じられなかったですよ。私なんかのことをこんなにも慕ってくれる女の子がいるの!? もう私の方が感激のあまり泣きそうだったし、今思い出しても涙が出そうなくらい嬉しかった。

 みんなを勇気付けたり、楽しませたりするのがプロゲーマーである私の仕事のはずなのに、私の方が勇気付けられちゃってる。彼女のために一つでも多く試合がしたい。彼女にもっと喜んでもらいたい。気付けば自然とそう思っていて、それが私の元気になりました。

たくさんの元気をくれたSabrinaちゃんと

We have chocoblanka!

 既に十分ウルウルきていた私に、さらに活力をくれる出来事が続きました。この世界大会EVOの公式Twitterアカウントが「We have chocoblanka」という言葉と共に、Sabrinaちゃんと私の写真をツイートしてくれたのです。

 直訳したところでは、「私たちのゲームコミュニティーには〈チョコブランカ〉がいる」と言ってくれているのかなと。私の勝手な解釈かもしれませんが、要するに私はアメリカの格闘ゲームコミュニティーに対し、何か役立つことができているのかなと。私がいる意味があるのかなと――。

〈チョコブランカ〉という存在は、〈チョコブランカ〉が誕生した時も今も格闘ゲームコミュニティーが作ってくれています。だからこそ私は、7年前にガーフィールドさんが教えてくれたように、「役割」を果たさなければならないのです。年を重ねて落ちていく体力とは裏腹にやるべきこと、やりたいことは増え、いろいろなことを両立させるのはとても大変だけれど、でももっと頑張れるはず。もっとやれるはず。Sabrinaちゃんの笑顔のために、応援してくれるみんなのために、もっと頑張らなければ。

 今年のEVOは、活力をたくさんもらえたEVOでした。来年はどんなEVOになるのでしょう? 私はいつまでEVOに参加するのでしょう? それはわかりませんが、とにかく私は私の今やるべきことに集中して、私の役割を全うしようと思います。私の役割がなくなるその日まで!

 それでは今回はこのあたりで。また次回お会いしましょう。

著者情報

プロゲーマー

百地裕子

ももち ゆうこ

1986年、兵庫県生まれ。中京大学体育学部卒業。2008年より対戦格闘ゲームを始め、国内大会でトップゲーマーに勝利して知名度を獲得。愛称は〈チョコブランカ〉。11年にプロゲーミングチーム「Evil Geniuses」(本拠地・アメリカ)からスカウトされ、日本人初の女性プロゲーマーとなる。17年には北米のプロゲーミングチーム「Echo Fox」に移籍。夫は同チームに所属するプロゲーマーの〈ももち〉こと百地祐輔。世界初の現役プロゲーマー夫婦として、15年に株式会社忍ismを設立。「ゲームと人を繋げる」をモットーに、世界で活躍できる後進の選手育成、ゲームコミュニティーを盛り上げるためのイベントの企画・運営に携わる。

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