性知識イミダス:月経(生理)のお悩みQ&A
イミダス編
(構成・文/加藤裕子)
1回の月経が8日間以上続くと「過長月経」という診断になりますが、実際の診療で重視するのは月経の日数よりも、むしろ経血の状態です。
月経の最後のほうで薄い経血が4~5日続くことで「8日以上の月経」になる場合は、まず問題ないと言っていいでしょう。
月経全体を通して少量の出血がだらだらと続く場合も同様です。たまたま前の月に女性ホルモンのエストロゲン値が上昇せずに排卵がうまくできなかったりすると、低い値のエストロゲンにさらされ続けた子宮内膜が排出されて出血が始まる、ということは珍しくありません。その場合は、そもそも子宮内膜自体が厚くなっていないので経血量も少量です。また、通常は月経の前半にエストロゲン値が上昇することで、子宮内膜と子宮内の血管の修復が始まり、経血が止まるのですが、エストロゲン値が上昇しなければ内膜の修復も始まらないので、量は少なくてもなかなか出血が終わらないという状態になります。これを「無排卵月経」と呼びます。将来的に健康を害したり妊娠しにくくなったりすることはありませんので、そのまま経過観察します。更年期に少量の出血が続くという場合も、無排卵月経です。
診察が必要なのは、月経期間中、鮮血が出る状態が7日以上続くときです。特に、経血量が多い「過多月経」の場合は子宮筋腫や子宮腺筋症などが原因になっていることも考えられますから、次のQ&Aも参考にしてください。
Q6.出血量が多く、ナプキンがもつかどうかいつも気になってしまいます。
経血量が多いか少ないか、人によって判断基準は異なると思いますが、夜用ナプキンでも2時間もたないくらいの出血量がある場合は「過多月経」という診断になります。この場合は必ず一度は婦人科の診察を受けてほしいと思います。また、普段より明らかに出血が増えたというときも念のため受診したほうがいいでしょう。過多月経による貧血で輸血が必要になることもあります。
原因として最も多いのは、子宮筋腫の中でも子宮粘膜下筋腫など子宮の内側に筋腫が飛び出てくるタイプのものです。子宮の外側にできる子宮筋腫は大きくても特に痛みや出血増加などの自覚症状が出ません。他方、子宮の内側に筋腫ができると、子宮内膜のはがれる面積が大きくなったり、子宮収縮不良になったりすることで出血量が増えると考えられます。子宮がん検診では子宮頸部入り口の粘膜を調べたり、触診したりしますが、それだけではこのタイプの子宮筋腫を発見することは難しいので、大量の経血は非常に重要なサインです。なお、子宮筋腫自体は悪性化することはなく、背中の血管や骨盤の臓器を圧迫するほど巨大化したり、経血の量が多くて貧血になったりということであれば手術しますが、小さければ、筋腫を肥大させる原因となる女性ホルモンを薬で抑制することで対処します。
子宮内膜症が原因で出血量が増えている場合は、痛みも伴うのが特徴です。中でも卵巣内に発生する子宮内膜症は卵巣チョコレート嚢胞と呼ばれ、40歳以上で4センチメートルを超えるとがん化する可能性があるため、妊娠予定がない人には嚢胞摘出などの手術が勧められます。妊娠を希望する人であれば、手術によって卵巣機能が低下するリスクを避けるために、ピル(女性ホルモンを合成した薬剤)を使って症状を抑えながら治療を行う選択肢もあります。ちなみに、ピルには保険が適用されない経口避妊薬の側面もありますが、子宮内膜症の治療薬としてなら保険が適用されます。
過多月経の原因となる病気のうち、治療が一番難しいのは子宮腺筋症です。子宮腺筋症は子宮内膜症の1つの型で、子宮筋層の中に内膜組織がくまなく食い込んで増殖しているという状態なので、内膜組織だけを取り除くことはほとんど不可能です。手術で筋層ごと切除してもすべてを取りきることはできず、再発も起こりやすい病気といえます。良性であっても、多量の出血や貧血、痛みなどは大きな負担になり、治療としては、ピルの服用か、あるいは黄体ホルモン剤とIUD(子宮内器具)を合体させたIUSという器具(商品名「ミレーナ」)などを使用する対症療法になります。40代以上で妊娠を希望しない場合は、子宮摘出が最も確実な治療法です。
Q7.生理中でもないのに出血しました。病気でしょうか。
月経周期に関係なく出血する「不正出血」は、ホルモンバランスの乱れや腟炎、子宮筋腫などのほか、子宮体がん、子宮頸がん、卵巣がんの可能性も考えられます。また、少量の出血があって月経だと思っていたら、実は妊娠初期の出血だったということもあります。鮮血かどうかに関係なく、排卵や月経ではない時期に陰部を拭いたらちょっと赤黒いものがついたという程度でも「たいしたことないだろう」と思わず、必ず婦人科で診察を受けましょう。
Q8.生理痛が立っていられないほどつらいです。
日常生活に支障をきたすほどの月経痛には「月経困難症」という診断名がついています。子宮内膜症、子宮筋腫、子宮腺筋症、骨盤内感染症など病気が原因の場合と、原因不明の場合がありますが、どちらにしても、我慢せずに痛みを和らげる治療が必要です。
病気が原因でなければ、鎮痛剤を飲むことで痛みが軽くなることも多いです。鎮痛剤は婦人科でも処方できます。処方薬ならより安心ですが、市販薬でもいいでしょう。痛くなる前に飲むと効果的ですが、基本的にはいつ飲んでも構いません。続けて飲むときは、前回の服用から6時間以上空けるようにしましょう。
同じ薬を飲み続けて効果が感じられなくなったときや、鎮痛剤では痛みがおさまらない場合は、「薬に耐性がついた」、「薬の効き目が弱まった」というよりも、病気などの悪化が原因になっている可能性が高いので、必ず婦人科で相談してください。検査をした上で基本的にはピルで月経の諸症状を緩和することになるでしょう。
ピルというと副作用を心配する人が多いのですが、現在はホルモン量が少なく副作用も少ない低用量ビルが処方されています。また一度飲んでみて、からだに合わないときは別の種類のピルに代えれば問題なく飲めることもありますので、つらい月経痛に悩んでいる人は試してみてください。どうしてもピルに抵抗があるという場合は、漢方薬を婦人科で処方することもできます。足浴や軽い運動などで血行をよくし、からだを温めることもお勧めです。
月経痛だけではなく、月経中には強烈な眠気や集中力低下などで普段どおりに仕事や生活ができないということがよくあります。本来はあまり無理せずに過ごすのが一番ですが、それが難しいときは、少しでも互いに配慮しあえるような環境がつくれるといいですね。
Q9.いつも生理前になると、イライラや頭痛がひどくなるので困っています。
これはPMS(「Pre Menstrual Syndrome」の略)、または月経前症候群と呼ばれる症状です。月経が始まる5~7日ほど前から、頭痛やむくみ、便秘、憂うつ感、集中力低下、強烈な眠気など、身体面や精神面に様々な症状が起こることを指します(発症期間には個人差があります)。イライラが続くと悩む人も多いようです。原因としては、女性ホルモンがなんらかのかたちで関係すると言われていますが、まだ明らかにはなっていません。
痛みなどの身体的症状は鎮痛剤などで対処できますが、精神的な症状はピルでも改善が難しいというのが実情です。柴朴湯(さいぼくとう)などの漢方薬で憂うつ感が軽くなる人もいますし、心療内科で症状に合った薬を処方してもらうというのもひとつの方法だと思います。
Q10.生理中のセックスにはどのようなリスクがありますか?
通常、腟内は常在菌によって自浄作用が保たれていますが、月経中はこの常在菌が変化するので、外部から菌が侵入しやすい状態になります。しかも、経血も含めて血液は細菌が繁殖しやすいため、月経中のセックスによって雑菌が入ったときに炎症を起こしやすくなってしまいます。
ほかにも、精液に含まれる物質によって子宮が収縮を起こし、月経痛がひどく感じられることがあります。「月経中は妊娠しない」というのも誤りなので、雑菌の繁殖を防ぐ意味でも、月経中はコンドームを使うのが良いでしょう。