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福島を語る

福島を語る(3)『大熊町史』に刻まれた警鐘

三浦英之(新聞記者、ルポライター)

岩本由輝(東北学院大学名誉教授)

岩本 原発ができて金銭的には豊かになったかもしれないけれども、水田単作農村だった昔ののどかさはなくなってしまいました。村に入って話を聞くと農業をやっている家でも会社員になっている人が多いですね。会社勤めで給料をもらって、農家の収入分はおまけのようなものになっています。他に仕事がなくて、孫請けの会社に雇われながら除染の仕事をしている人もたくさんいます。このあたりでは、東京電力ではなくても、その子会社、孫会社に勤められれば御の字なんですよね。給料の額が地元の会社とは全然違いますから。だから、今でさえ、事故が起きなければ原発はあっても別に悪くないという風潮があります。

三浦 原発事故が起きて、それでもまだ原発で食べていかなければいけないということでしょうか。それは、あまりにも悲しい事実ですね……。日本はエネルギーを多く持たない国です。石油も出ませんし、石炭もなかなか厳しい。そうした中で日本が生き残っていくためには、原発というのはどうしても必要なのでしょうか。

岩本 未だに「次は用心するから事故を起こさない」という神頼みのような考えを持つ人がいますが、廃炉作業でも、大小問わず何らかの事故が起きています。そうした中で、今後、致命的な事故が起きないという保証はまったくありません。原発をつくって、維持するということは、今後も事故が起きうるのを受け入れるということなのです。その覚悟が果たしてあるのか。少なくとも私は『大熊町史』の中で、“原発との共存・共栄”とは、決して書きませんでした。今でも、それは間違っていなかったと思っています。

著者情報

新聞記者、ルポライター

三浦英之

みうら ひでゆき

1974年、神奈川県生まれ。『五色の虹 満州建国大学卒業生たちの戦後』で第13回開高健ノンフィクション賞、『日報隠蔽 南スーダンで自衛隊は何を見たのか』(布施祐仁氏との共著)で第18回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞、『牙 アフリカゾウの「密猟組織」を追って』で第25回小学館ノンフィクション大賞、『南三陸日記』で第25回平和・協同ジャーナリスト基金賞奨励賞、『帰れない村 福島県浪江町「DASH村」の10年』で2021年LINEジャーナリズム賞、『太陽の子 日本がアフリカに置き去りにした秘密』で第10回山本美香記念国際ジャーナリスト賞、第22回新潮ドキュメント賞を受賞。

東北学院大学名誉教授

岩本由輝

いわもと よしてる

1937年、東京生まれ。1967年、東北大学大学院経済学研究科博士課程修了。経済学博士(東北大学)。山形大学人文学部教授、東北学院大学経済学部教授を経て、2011年より現職。主な著書に『近世漁村共同体の変遷過程――商品経済の進展と村落共同体』(塙書房、1970年)、『柳田國男の共同体論――共同体論をめぐる思想的状況』(御茶の水書房、1978年)『東北開発人物史――15人の先覚者たち』(刀水書房、1998年)などがある。

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