imidas - 情報・知識&オピニオン

探究

政治・経済

民主主義って何だろう? 大胆にも、宇野先生に聞いてみた。【後編】

宇野重規(政治学者)

和田靜香(音楽/相撲ライター)

宇野 でもねぇ、僕は「民主主義」という言葉をなんとか定着させたいんですよ。以前はカタカナで「デモクラシー」を使っていたんですが、デモクラシーって空々しい感じがしてしまって……。 手垢も付き、ネガティブに思われたとしても、「民主主義」という言葉を「いいものだ」ってみんなが思えるようになったほうがいい。誤訳だとしても「民主主義」という言葉を使って、「植えつけられた、自分で獲得したものではない」というみなさんの感覚をなんとか過去のものにしたいです。

責任は一人だと苦しいが分け合うとより強く柔軟になる

和田 イベントをオンラインで見ている方からご意見をいただきました。とてもいいことが書いてあります。「責任は一人で引き受けると苦しいですが、仲間や周りと分け合うことで、自分の暮らしと周りの暮らしを、より強く柔軟なものにしてくれるように思いますが、それも民主主義の良さでしょうか」

宇野 これは、素晴らしい! 今日の結論ですね。責任って、自分一人で抱え込むと重たくてしんどいけれど、みんなで分かち合うと力に変わる。責任を分かち合える仲間たちと会えるのが民主主義ということです。それが、むしろエネルギーになったり……

和田 より大きな力を生む!!

宇野 張り合いになったり、モチベーションになったりするということですよ。民主主義の社会は、本当の意味で民主的であったら、それはより強くなるはずです。みんながここにかかわろうとすれば、間違うことがあったとしても修復能力も生まれます。柔軟である。強くて柔軟。

和田 強くて柔軟、というのがキモですね。簡単には折れない。今日の結論を言ってくださったような。なるほど。民主主義とはそういうものなんですね。

宇野 でも、自分もまだ模索しています。いろんな地域で出会った「かかわろう」とする人たちがいて、こういう人たちのことを、僕らが民主主義と呼べばいいと思っているのです。僕らがそういう人たちを紹介していけば、自分も民主主義をやってもいいかなと思う人が増えていく。自分の問題を自分たちの力で解決していくという、その手応え、ある種の納得感みたいなものが民主主義の一番本質にあると思います。

和田 私でも実践できるのが、民主主義ですね。

宇野 そうです。誰かえらい人がやって! というのは民主主義の逆、なんです。民主主義って、制度ができたらずっと安定しているかというと、そうでもなくて、すぐにまた民主主義じゃないほうが強くなってくる。どうせ自分の力じゃどうにもならないから、「誰か決めて」「もうどうしようもない」と諦めてしまう。そうすると民主主義は消えてしまうんですね。

和田 民主主義は、手間暇が掛かる!

宇野 ずっと押し合いへし合いをやっていかなくてはならないのです。でも、民主主義が存在する空間をつくったほうが、しなやかで、強くて、納得感があるでしょう。

和田 そうですね。なんか今、仲間ができる感じがしました。民主主義を自分がやると、一人ぼっちじゃなくなるなって。

宇野 その仲間もね、ずうっと仲間である必要はないと思うんです。さっきも言いましたが、ある瞬間、あるテーマに関して思いを共有したり、対話を交わせたりするだけでも十分です。そういう仲間が少しでもいることが、人間にとって心の支えになるんじゃないですかね。

和田 なります。地域の仲間、仕事の仲間、その時々に仲間がいることは大事です。

宇野 今日は私たち二人はここで仲間であり、社中であるということで。

和田 メッチャ嬉しいです。どうもありがとうございました。

 

  • *この対談は、ジュンク堂書店池袋本店 オンラインイベント・『自分で始めた人たち』刊行記念 民主主義って何ですか?「ゼロからぐいぐい質問するライター」でおなじみの和田靜香さんが、宇野重規先生に徹底質問!【2022年3月22日実施】を再構成しています。

著者情報

政治学者

宇野重規

うの しげき

1967年東京都生まれ。東京大学社会科学研究所教授。東京大学法学部卒業。同大学大学院法学政治学研究科博士課程修了。博士(法学)。専門は政治思想史、政治哲学。
『政治哲学へ 現代フランスとの対話』(東京大学出版会)で2005年度渋沢・クローデル賞ルイ・ヴィトンジャパン特別賞を、『トクヴィル 平等と不平等の理論家』(講談社選書メチエ)で2007年度サントリー学芸賞(思想・歴史部門)を、『民主主義とは何か』(講談社現代新書)で2021年度石橋湛山賞を、それぞれ受賞。その他に『保守主義とは何か 反フランス革命から現代日本まで』(中公新書)など著書多数。

音楽/相撲ライター

和田靜香

わだ しずか

1965年千葉県生まれ。音楽評論家・作詞家の湯川れい子のアシスタントを経てフリーの音楽ライターに。趣味の大相撲観戦やアルバイト迷走人生などに関するエッセイも多い。著書に『スー女のみかた 相撲ってなんて面白い!』(シンコーミュージック)、『音楽に恋をして♪ 評伝・湯川れい子』(朝日新聞出版)、『ワガママな病人vsつかえない医者』(文春文庫)、『おでんの汁にウツを沈めて~44歳恐る恐るコンビニ店員デビュー』(幻冬舎文庫)、『東京ロック・バー物語』(シンコーミュージック)などがある。近著『時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか? 国会議員に聞いてみた。』(左右社)が話題。

関連記事