マタハラ解消に向けた大きな一歩
小酒部さやか(株式会社natural rights代表取締役/マタハラNet創設者)
(構成・文/牛島美笛)
マタハラNetを立ち上げた当初から「マタハラ問題は働き方の問題」だと言い続けていますが、マタハラ防止の取り組みをきっかけに、本当の意味で「ダイバーシティ」を推進することをさらに強く訴えていくつもりです。
ダイバーシティとは、多様な人材を積極的に活用しようという考え方ですが、今の日本の企業においては、ダイバーシティ人材は「お荷物」であり、その他の社員の負担を増やすだけの存在のように思われています。しかし、子育てをしながら働く女性をはじめとしたダイバーシティ人材がいることは、新しい制度を作るきっかけとなるほか、新しい視点により周囲の人たちにも良い影響を与えるなど、組織としての成果につながるはずです。これは企業の経営戦略として取り入れていくべきことだと私は思います。
ダイバーシティを推進するには、人事制度の改善が欠かせません。人材の育成やダイバーシティ人材のフォローをしたことが評価の対象となり、給料に直結するような人事評価制度にしていく必要があるのです。具体的には、育児や介護などで社員が減って負担が増えた分の人材補充ができないのならば、抜けた社員の分の給料を分配することなども考慮していきます。
マタハラ防止措置により企業側の運用負担が増すこともありますが、義務だからやるのと、経営戦略としてやるのでは、まるで違います。この防止措置が広がり、きちんと運用されるようになれば、マタハラだけでなくパワハラや、家族介護をする人に対するケアハラ、子育てをする男性へのパタハラなどあらゆるハラスメントが改善されるでしょう。そしてその結果、時間的制約のない男女を含むすべての人にとって働きやすい職場環境が浸透することで長時間労働が是正され、真の意味でのワークライフバランスの実現に近づくのではないでしょうか。
著者情報
株式会社natural rights代表取締役/マタハラNet創設者
小酒部さやか
おさかべ さやか
2005年、多摩美術大学美術学部グラフィックデザイン科卒業。(株)アサツー ディ・ケイにてアートディレクターとして勤務後に転職した会社で、契約社員として雑誌の編集業務に従事する中、マタハラ被害に遭う。2014年7月、ほかの被害女性らとともにマタハラNetを設立(2015年6月にNPO法人化)。アメリカの外交・国際政治専門誌「フォーリン・アフェアーズ」にその活動が掲載されたほか、「カーネギー・カウンシル」研究員の取材を受けるなど、世界的に注目を集める。2015年3月、米国務省「世界の勇気ある女性賞」を日本人として初めて受賞。2016年11月、株式会社natural rightsを設立。代表取締役に就任。著書に『マタハラ問題』(筑摩書房、2016年)、『ずっと働ける会社』(花伝社、2016年)がある。
●natural rights http://www.naturalrights.co.jp/
(2017.02)