大阪市立小学校、「現場から市長に向けて声をあげた校長先生」の奮闘~公教育のあるべき姿を問い続ける
木村元彦(ノンフィクションライター、ビデオジャーナリスト)
2024年2月6日、久保は大阪市会へ「大阪市特別顧問による不当な支配に服する教育行政の抜本的な改善を求める陳情書」を提出した。情報公開請求によって、大森特別顧問から市教育委幹部への大量の「指示」メールの存在が明らかになった。久保に対する処分だけではなく、教育政策課長に対してのメールでは、「リベラルアーツ教育」や「チャレンジテスト」についての市教委の意向を覆させていることが判明した。旧教育基本法第10条には、「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負つて行われるべきものである」とあった(*)。
今、これもまた看過するわけにはいかない。海外の教育者たちの指摘から立ち上がった久保であるが、その行動には自身の教師体験という大きな裏付けがある。
久保「確かにこのままでは、教育はだめになる。競争と格差の拡大で学校の体力がどんどん失われているんです。僕が最初に校長を務めた学校では、トリプルワークしてるお母さんがいて、そんな状況やから子どもに対していろんなトラブルも起こすんです。でも、お母さんが、不真面目で悪い人なんかと言ったら、月末になったら電気代を払えないかもしれへん経済状況に追い詰められて大変なんです。そんな人に、『もっと子どものことを見てや』って、やっぱり僕は言えないなと思った。だから、学校や地域がカバーしてきたんです。でも今はそういう共同体が、学力とも言えないテストの点数を上げるという目標に忙殺されて分断されている。僕らはすべての子どもたちの未来のために役に立ちたい。教師って9割しんどくても1割子どもたちに嬉しいことがあったら、それが幸福なんです」

木川南小学校最後の日の久保校長(当時)(2022年3月31日。撮影:斉加尚代)
著者情報
ノンフィクションライター、ビデオジャーナリスト
木村元彦
きむら ゆきひこ
1962年、愛知県生まれ。中央大学卒業。東欧やアジアを中心に、スポーツ文化や民族問題などの取材、執筆活動を続ける。著書に『誇り』(98年、東京新聞出版局)、『悪者見参』(2000年、集英社)、『終わらぬ「民族浄化」セルビア・モンテネグロ』(05年、集英社新書)、『蹴る群れ』(07年、講談社)、『社長・溝畑宏の天国と地獄』(10年、集英社)、『争うは本意ならねど』(11年、集英社インターナショナル)、『徳は孤ならず』(16年、集英社)、『橋を架ける者たち』(16年、集英社新書)、『無冠、されど至強』(17年、ころから)、『コソボ 苦闘する親米国家 ユーゴサッカー最後の代表チームと臓器密売の現場を追う』(23年、集英社インターナショナル)など多数。『オシムの言葉』(05年、集英社インターナショナル)で第16回ミズノ・スポーツライター賞を受賞。