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一語千金

酒税

[liquor tax]
ウイスキーが琥珀色のワケ

玉手義朗(エコノミスト)

 ウイスキーと言えば、芳醇な香りと琥珀(こはく)色が特徴だが、これを生み出したのは税金だった。ウイスキーは麦芽などを蒸留したもので、元々はジンやウオツカのように透明の酒。ところが18世紀、イングランドに併合された後のスコットランドで酒の税率が大幅に引き上げられると、これに反発した生産者は酒を密造し、樽に詰めて山奥に隠した。しばらくして開けてみると、樽の中で熟成されたウイスキーは琥珀色に変わり、味わいも豊かになっていたという説がある。税金逃れがきっかけで、ウイスキーを琥珀色に熟成させる方法が見つかったのだ。
「酒税」の歴史は古く、課税する側と支払う側との間で、様々な攻防が繰り広げられてきた。中世に始まったとされる日本の酒税は重要な財源となり、明治時代の「酒造税」を経て、現在は「酒税法」による運用が行われている。
 酒税は国が徴収する「国税」で、数量に対して課税する「従量課税方式」が採用されている。酒を「発泡性酒類」「醸造酒類」「蒸留酒類」「混成酒類」の四つに分類した上でさらに17品目に細分化、それぞれに税率が定められるという複雑な体系を持つ。
 酒税は増税が容易な税金だ。お酒は生活必需品ではなく嗜好品。過度な飲酒は健康を害し、酔っ払いが社会秩序を乱すこともあり、道徳的観点からも増税は理解を得やすかった。
 明治政府は酒税に大きく依存していた。財政難から断続的に増税を実施、税収額は1899年に地租を抜いて国税収入の第1位となり、1902年には租税のうちの約42%を占めるまでになる。平成の現在も、毎年のように引き上げが検討されるなど、「困った時の酒税頼み」の状況が続いているのだ。
 しかし、安易な酒税の増税は生産者を苦しめる。企業努力で価格引き下げや品質向上を実現させても、酒税の引き上げによって帳消しになってしまう。このため、酒税をいかに軽減するかが、生産者の最重要課題となっている。
 その典型がビール、350ミリリットル当たりの酒税は77円(2014年4月現在)と高水準だ。そこでビールメーカーは、酒税が47円となる「発泡酒」を投入、さらには麦芽以外の原料を用いた「第3のビール」を開発し、酒税を28円まで下げることに成功する。これに対して政府は、発泡酒が売れ始めるとその税率を引き上げるなど、両者は激しい攻防を展開してきた。
 サッポロビールの「極ZERO」を巡る問題もその一つだ。13年6月、第3のビールとして発売された「極ZERO」は、低価格なだけでなく、独自の製造技術で「プリン体ゼロ」「糖質ゼロ」を実現し大ヒットした。しかし、14年1月になって国税当局から第3のビールに該当しないと指摘され、サッポロビールは酒税の差額分116億円を支払った上に、発泡酒として「極ZERO」を再発売することになった。
 企業努力を認められなかったわけだが、「極ZERO」は、健康志向の消費者に支持され、その後も売れ続けている。税金逃れがウイスキーを琥珀色にしたように、酒税軽減の試みが、ヒット商品を生んだのだ。
 様々な思惑に左右されてきた結果、現在の酒税は複雑かつ不公平になっている。税金対策ではなく、消費者が喜ぶ安くておいしいお酒の開発を促進させるように、酒税制度を改革する必要があるだろう。

著者情報

エコノミスト

玉手義朗

たまて よしろう

1958年生まれ。筑波大学卒。東京銀行、マニュファクチュラース・ハノーバー銀行などで、外国為替取引に携わる。その後、テレビ局で経済部デスクなどを経て、現在はフリー。著書に『円相場の内幕』(1995年、集英社)、『経済入門』(共著、2004年、ダイヤモンド社)がある。

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