官民ファンド
玉手義朗(エコノミスト)
東京の秋葉原と茨城県つくば市を結ぶつくばエクスプレスは、第三セクターの成功事例の一つだ。沿線の自治体と民間企業の共同事業で2005年8月に開業すると、予想以上の利用者を集めて、開業後20年の目標だった単年度の黒字を5年目の2010年に達成、地域活性化にも貢献している。政府などの「官」が主導すると「親方日の丸」となり、かつての国鉄のように赤字を垂れ流す事態を引き起こす恐れがある一方で、「民」だけでは大きなリスクを取れず、将来の財産となるような鉄道は生まれない。官がリスクを補いながら、民の活力を取り入れるという第三セクターの長所が、つくばエクスプレスの成功をもたらした。
「官民ファンド」は金融分野での第三セクターだ。政府や自治体などと民間企業が資金を出し合い基金(ファンド)を組織し、様々な事業に融資などの形で資金を拠出、成功した後に配当や収益を得るというもの。
官民ファンド誕生の背景には、日本経済の長期低迷があった。将来性はあってもリスクが高い事業には、民間金融機関は資金提供を渋る。一方、政府だけでは事実上の補助金となり、採算を無視した無駄遣いとなる事態を引き起こしていた。
官民ファンドは「官」が加わることで「民」の参加を促す「呼び水」となり、リスクはあるものの、将来性と採算性を兼ね備えた事業に資金を投入することが期待できる。第三セクターの特徴を生かしたつくばエクスプレスのような事業が数多くできれば、日本経済も再生されるというわけだ。
13年1月の緊急経済対策に「民間投資の喚起による成長力強化」として盛り込まれたことで、官民ファンドは急速な広がりを見せている。現在は産業革新機構、地域経済活性化支援機構、農林漁業成長産業化支援機構、海外需要開拓支援機構(通称クールジャパン機構)など、主なものでも10ほどの官民ファンドが活動している。
これらの中で規模が大きいのが産業革新機構だ。基金総額は3000億1000万円だが、さらに資金が必要な場合には、政府が保証を付けることで、民間金融機関から最大1兆8000億円まで資金調達が可能だ。ジャパンディスプレイやルネサスエレクトロニクスといった電子デバイス事業、抗がん剤や認知症治療薬開発のベンチャー企業に電子書籍開発と、日本経済の「革新」につながる様々な分野に資金を拠出してサポートをしているのである。
地方自治体などでも創設が相次ぐ官民ファンドだが、目的が不明確で官の政策に利用されているだけとの指摘もある。その一例が、失敗に終わった産業革新機構による大手電機メーカーのシャープへの資金拠出だ。産業革新機構の目的は革新的な事業への投資で、企業救済ではないはずだが、技術流出を恐れた政府が影響力を行使して、資金を拠出させようとした。この他にも政府が保証していることから、民間の金融機関に比べて有利な立場にあり、民業を圧迫しているとの指摘もある。
つくばエクスプレスの乗り心地は快適だが、失敗している第三セクターも数多く、その場合の損失は税金で埋め合わされることになる。つくばエクスプレスのような事業を、日本各地に広めることができるのか? 官民ファンドの成果が問われている。