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迷走した20年度大学入試を振り返る 〜やはり守られなかった重要な原則

第15回

大内裕和(武蔵大学教授)

 二つめは、センター試験をほぼ踏襲したとはいえ、試行調査型の問題が出されたことです。第1日程では、「評論」は生徒のノートの穴埋めと異なる文章との照合問題が、「小説」では本文の批評に関する問題が出されました。「漢文」でも複数資料を踏まえて理解力を問う出題がなされています。試行調査ほどではなかったものの、複数の題材を関連させる問題が頻出しました。これら複数の題材を関連させる問題が、受験生の思考力や判断力を問う内容になっているのかどうか、またそこで問われている内容が、複数の題材を関連させなければならない必然性があるのかどうか検討される必要があると思われます。

 複数の題材を関連させる問題の場合、どうしても問題文の量を増やすことになります。決められた試験時間内で問題文の量が増えれば、読解力に基づく思考力よりも、情報処理を素早く行う「作業」が重視され、英語の試験と同様の問題が起こるとも考えられます。

 国語については、問題作成にあたった専門部会の複数の委員が、導入予定だった記述式問題(「実用的文章の出題」「複数の題材による問題」が多数)の例題集を出版し、利益相反などの疑念を指摘されて辞任する事件が起きました。その影響なのか、今回の出題では実用的文章の出題や複数の題材による問題が、特に避けられた可能性があります。もしそうであれば、時が経つにつれて試行調査型の問題が広がっていく危険性がありますから、今後の動向を注視する必要があるでしょう。

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 20年度の大学入試は、新型コロナウィルスにも影響を被りました。共通テスト第1日程終了後の1月21日、宇都宮大学は感染拡大防止や受験生の健康と安全を理由に、大学が実施する2次試験(個別学力検査)の中止を発表しました。また2月3日、信州大学の人文学部・経法学部も同様に2次試験を中止しました。いずれも入学試験の合否は、共通テストのみで判定することになります。

 感染拡大の防止や、受験生の健康と安全を守ることの重要性は理解できます。しかし、共通テスト終了後に選抜方式を変更するのは、重大なルール違反だと言えるでしょう。

 受験生は、共通テストと個別学力検査の両方が課されることを前提に試験準備を進めています。これでは共通テストを重視して準備してきた方が有利、2次試験を重視して準備してきた方が不利となります。また、2次試験の中止は受験生に志望大学の変更をもたらし、ひいては難易度にも影響をおよぼすなど、入試の公平性・公正性が失われることとなります。両大学は、遅くとも共通テストの実施前に中止を伝えるか、それができなければ日程や方式を工夫してでも実施すべきであったと私は思います。

 大学入試の重要な原則は、(1)大学教育を受けるのに必要な能力を的確に測る内容であること、(2)事前に適切な情報提供を行い、すべての受験生が準備しやすい環境を整えること、(3)入試の公平性・公正性が維持されること、の3点だと私は考えます。今回の大学入試でこれらに適さない事例が出ていることは大きな問題です。若者たちの将来のためにも、入試の重要な原則が守られることを強く求めていかなければなりません。

著者情報

武蔵大学教授

大内裕和

おおうち ひろかず

1967年、神奈川県生まれ。東京大学大学院教育学研究科博士課程単位取得。松山大学教授、中京大学教授を経て2022年度より現職。「入試改革を考える会」代表。「奨学金問題対策全国会議」共同代表。著書に「ブラックバイトに騙されるな」(集英社)、「教育・権力・社会」(青土社)、「ブラック化する教育 2014-2018」(青土社)などがある。

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