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ESAT-J問題で問われる日本の民主主義 ~受験生・保護者の声は都政に届くか?

第35回

大内裕和(武蔵大学教授)

 10月7日、条例案に賛成した都民ファーストの会の3人の都議が、本会議後にマスコミの取材を受けた際にそれぞれ手に持っていたのは、保護者の会が作成した「都立高入試にスピーキングテストはいりません。ムリっ。」というタイトルのチラシでした。このことは、彼らが何をもっとも大切にして行動したのかをはっきりと示しています。

 一連の動きを、都民ファーストの会の内紛や主導権争いとして捉えるのは誤りです。都政が主権者である受験生・保護者・都民の立場になって、どれだけその声に耳を傾けているかが問われているのです。

◆◆

 その日、都議会ではもう一つ大きな動きが起こりました。都立高入試へのESAT-J導入に反対する超党派の「英語スピーキングテストの都立高校入試への活用中止のための都議会議員連盟(以下、英スピ議連)」の発足です。日本共産党、立憲民主党など多数の会派から42名もの都議が集まりました。都民ファーストの会を除名された3名も加わっています。これは都議会議員定数127名(現員123名)の約3分の1に達しています。

 10月8日の東京新聞(朝刊)には、都民ファーストの会の執行部が反対する都議に対して発したとされる「知事がやりたいんだ」という言葉が、見出しで掲載されました。これは重大な問題です。教育基本法に次の条文があるからです。

【教育基本法第16条】

 教育は、不当な支配に服することなく、この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきものであり、教育行政は、国と地方公共団体との適切な役割分担及び相互の協力の下、公正かつ適正に行われなければならない。

 この条文は、教育内容への政治・行政権力の介入を「不当な支配」として禁じるものです。「知事がやりたいんだ」という言葉が事実であるとすれば、小池都知事は教育への「不当な支配」を行ったことになり、教育基本法違反となります。また、このことは文教委員会で「東京都立高等学校の入学者の選抜方法に関する条例案」を政治的中立性に反するとし、浜教育長への要望書提出において「教育委員会は首長から独立した機関である」と批判した、自民・公明党、都民ファーストの会内のESAT-J推進派の主張を自ら崩すものです。

 11月27日に予定されているESAT-J実施日まであと1カ月ほどですが、反対運動は日に日に力を増しています。都民ファーストの会3都議の勇気ある行動と反対運動の広がりが、超党派の英スピ議連を生み出したことからも分かるように、教育の民主主義を求める主権者の声は大きなうねりをつくり出しつつあります。

 私が代表をつとめる入試改革を考える会は、10月31日13時から都庁記者クラブで英スピ議連と共同で記者会見を行います。また、英スピ議連は11月2日18時から、都議会第1会議室(都議会議事堂6階)で議連総会と都民集会を行います。都⽴⾼⼊試へのESAT-J導⼊を阻⽌することが できるか否か、主権者である私たちが問われています。

著者情報

武蔵大学教授

大内裕和

おおうち ひろかず

1967年、神奈川県生まれ。東京大学大学院教育学研究科博士課程単位取得。松山大学教授、中京大学教授を経て2022年度より現職。「入試改革を考える会」代表。「奨学金問題対策全国会議」共同代表。著書に「ブラックバイトに騙されるな」(集英社)、「教育・権力・社会」(青土社)、「ブラック化する教育 2014-2018」(青土社)などがある。

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