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連載

奨学金の返済苦による自殺者増 ~問題の重さに国はようやく危機感をおぼえたか?

第44回

大内裕和(武蔵大学教授)

 親や親族が保証人になり続けていることは、自己破産に至らなくても、奨学金返済に苦しむ若者に十分な負い目を与えます。彼らにうつ病をはじめとする精神疾患を抱えている人が多いのは、実情を「親や家族に知られたくない」と思う余りに無理な返済を続けてしまったり、返済をめぐって家族との関係が悪化したりすることで、少なからず心身を痛めつけてしまうからだと思います。今回の「奨学金返済苦」を理由とする自殺を考える際には、そうした若者の真面目さや責任感の強さについても知る必要があります。そのうえで人的保証制度は、一刻も早く廃止すべきです。

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 それと同時に奨学金返済の困難を改善し、返済負担を軽減する政策が必要です。延滞金制度は、返済できるにもかかわらず返さない人へのペナルティとしての意味をもっていました。しかし現状で延滞者の大半は、所得が低いため返したくても返せないのが実態です。それを考えれば、すでにペナルティとしての意味をなさなくなっている延滞金制度も廃止が求められます。

 返済猶予期限もしかり。本人の支払い能力を基準に猶予を設定しているのに、収入の増減にかかわりなく10年と期限を切るのは合理性がありません。本人の収入状況に合わせて猶予期限を見直すなどの、柔軟な対応はできないものでしょうか?

 さらに、返済負担そのものを軽減する政策を実施すべきです。たとえば有利子奨学金利用者に対して利息分の負担を軽減する、卒業後に一定期間(たとえば15~20年)返済を行った人には残額の返済を免除する制度を導入する、などが考えられます。そして最も望ましいのは、卒業後の本人所得に応じて奨学金の返済総額を減額する仕組みを導入し、無理なく返済できる制度に改善することです。

 奨学金制度は、経済的に困難な状況におかれている人にも進学の機会を与え、貧困のスパイラルを断ち切るための制度ではないでしょうか。奨学金の返済苦から前途ある若者が自殺したということは、制度の根幹を揺るがす事態だと思います。私は奨学金問題対策全国会議の共同代表として、これからも制度の改善を強く求めていきたいと考えています。

著者情報

武蔵大学教授

大内裕和

おおうち ひろかず

1967年、神奈川県生まれ。東京大学大学院教育学研究科博士課程単位取得。松山大学教授、中京大学教授を経て2022年度より現職。「入試改革を考える会」代表。「奨学金問題対策全国会議」共同代表。著書に「ブラックバイトに騙されるな」(集英社)、「教育・権力・社会」(青土社)、「ブラック化する教育 2014-2018」(青土社)などがある。

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