連載100回記念スペシャル対談「新型コロナ緊急事態宣言下 困窮する女性たちを救え!」
(構成・文/和田靜香)
雨宮 東京都が打ち出した支援事業であるはずのビジネスホテルの話をこちらからしても、「いや、うちはやってないから」って、平気で都内の福祉事務所が言うんですよ。20〜21年の年末年始、都はビジネスホテルを1日あたり1000室準備するって言ってたじゃないですか。それが結局、住むところがなくなった人たちのうち250人ほどしか泊まれなかった。広報が全くと言っていいほどされなかったから、ほとんどの人がこの制度を知らないままでした。年末年始に新宿区内の大久保公園で開いた「年越し支援・コロナ被害相談村」(以下、コロナ被害相談村)に相談に来た人たちに「ホテルに泊まれますよ」と言ったら、皆びっくりしていました。
小林 福祉事務所は「相談者が自分のところにどっと押し寄せてきたら困る」と思っている印象を受けます。
雨宮 安定した生活に結び付ける、つなげていくきっかけに一番できる機会なのに、一部の福祉事務所は自分たちの市区以外のところに行かせようとしてると感じましたね。きちんと対応してくれれば、仕事を失った人たちも労働者として復活できる。そうすれば税金も納められて、自治体にとってもよくなるのになって、いつも思います。

2020〜21年の年末年始に開設された「年越し支援・コロナ被害相談村」の様子。前列左から2人目が小林さん、4人目が雨宮さん。
(写真提供/つくろい東京ファンド)
普通の女性が炊き出しの列に繰り返し並ぶ!?
雨宮 「つくろい」のメール相談フォームには当初、女性からの相談がすごく多かったんですよね。
小林 ネットカフェで暮らしてる人たちの多くが、アルバイトとか日雇いとか非正規雇用の若い人たちです。働く先は飲食店とかホテル、性風俗店などです。コロナが一番打撃を与えたところが接客業で働く若い女性でした。だから、最初の頃は若い女性の相談者が多かった。ただ、21年1月8日から始まった2回目の緊急事態宣言下ではネットカフェが営業しているせいか、私たちのところに届く女性相談は昨年の春に比べると減りました。
雨宮 「コロナ被害相談村」には、3日間で344人が相談に訪れ、そのうち女性は62人でした。コロナ禍で驚くのは、失業だけが理由でホームレス化しているという女性の存在です。貧困問題に関わって15年になりますが、これまでに出会ったホームレス状態の女性は、失業以前に、DVから逃げているとか虐待を受けていたとか、複雑な事情を抱えていました。でも、今回は失業から生活苦という人がすごく多い。「コロナ被害相談村」でも一番多かったのは生活相談です。また、来た女性の29%がすでに住まいを失っていました。そういえば、年末年始の相談現場で「つくろい」が、生活保護のアンケートを取ってましたね? その中に、家族のために炊き出しを渡り歩いて、食料をもらっている女性がいましたよね。
小林 はい、私がお声掛けした方です。
雨宮 旦那と子どものために都内の炊き出しをめぐると知って、ショックを受けました。昨年から炊き出しに並ぶ女性を見かけるようになりましたよね。それまでは「常連」の男性中心だったけれど、池袋でも、新宿の都庁前でも、「普通の女性」が目立つようになってきています。2巡目、3巡目と列に並んで複数人分の食事を持って帰る人がいる。なんか変だな? と思っていたら、家族のために並んでるんだって、アンケートを見て初めて知りました。
小林 私もびっくりしました。家族の分の食料を炊き出しで賄うって……。どこの国の難民キャンプだって思うんですよ。
雨宮 でも、身なりとか普通なわけですよね。池袋で年末に食品配布をしていると、ミニスカートの女の子とか、上品な奥さま風の人がやっぱり2巡目、3巡目と並んでいました。前参議院議員の山本太郎さんも一緒に配布していたんですが、いつもなら「あ、山本太郎だ」って気づくのに、みんな切羽詰まっているからか誰一人気づかない。周りを見る余裕もないんです。1年前に比べても、切迫感が全然違います。昨年の5月から夏ぐらいは、まだ余裕があったんですけど。
小林 本当に結構ひどいところまで来てますよね。貧困って、小さい穴があったら、そこがどんどん広がって、いろんなことが原因になって落ちてきちゃうんですよね。虐待だとか家族の不仲とか、そういうところから逃げてきてネットカフェとかに暮らし、助けを求める先がない。仕事がなくなったらもうアウトなわけですよね。
雨宮 その仕事でも、一度もいい思いしたことない人が多い。ひどい目に遭って、しょっちゅうクビになったり、パワハラに遭うのがスタンダードだと、「休業手当を受けたら?」と言われても、「いや、ずっとこれなんで大丈夫です」となってしまう。突然切られて放り出されることが「普通」だと思っている。まともな扱いを受けてないから、保障があることを全く知らないんです。
支援は相談者との信頼関係づくりから始まる
小林 コロナ禍にあって、生活困窮は誰にでも他人事ではなくなって、一般の人たちからも何かしら支援したい! という声が高まっています。でも、どうやったらいいか分からないという声も大きいですね。
雨宮 今、道を歩いていても、ホームレスになりたてなのかな? という若い人が座っていたりしてますよね。でも、声を掛けるのは難しいという一般の方のご意見はよく耳にします。実は私も、なかなか声を掛けられない。小林さんは、どうしてますか?
小林 私も、すべての人に声を掛けるわけではありません。ただ、食べ物を持っている時は、必ずそれを渡しちゃいます。
雨宮 知らない人にもですか?
小林 はい、路上にいる人に。急いでいても、アッと気づくと、「これ、よかったらどうぞ」ってお渡しします。その後は「いつもあそこにいるのかな、それだったら今度もう一回寄ってみよう」と気には留めます。でも、毎回立ち止まりはしてないです。具合が悪そうだったり、倒れていたら誰であっても、もちろん声は掛けます。でも、声を掛けられるほうも警戒すると思うんですよね。
雨宮 向こうからしても、私たちのことを“カモにしようとする怪しい人”だと思っているかもしれませんよね。私たちの相談会に来た人は、「たとえ怪しい団体だったとしても、お腹すいてしょうがないから来ました」と言ってました。本当に所持金ゼロだったので小額の支援金を給付すると、「これどうすればいいんですか。このお金に見合う何をすればいいんですか」と言ってきて、「給付しますから」と伝えても、「いや、返します」って言い続けて。「ボランティア団体だからあなたに貸すことはできないんですよ」って説明することになるんです。
小林 困窮状態にある人は相手を怪しいと思っても、弱い立場にあるから「はい」しか言えない状態になってますよね。そっけなく断って、怒鳴られたり暴力振るわれたら怖いと感じている。圧倒的に弱い立場にある。だから、行政の相談窓口に行っても、ただ「はい」と職員の言いなりになってしまう。
雨宮 そうですよねえ。
小林 私たちも、もう何回も会っているから相談者と信頼関係はできていると思っていても、実はそうでもないことがあります。「つくろい」が借り上げているアパートにお連れする時など、こちらが懇切丁寧に説明すると「はい、はい」って聞いてくれますが、実際にアパートに到着するまでは「どこに連れていかれるのか。怖い」と思っている場合もある。多くの人は、過去にひどい体験をたくさんされていますからね。福祉事務所の人もそうだけど、私たち支援者も、相談者にとっては力のある存在であって、彼らと対等ではないというのを知っていないといけないなっていうのを思います。

雨宮さんと小林さん
「死なないノウハウ」がすごく貯まった
雨宮 支援をしていて嬉しいこと、葛藤することはどんなことでしょうか?